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調査打ち切り、黒塗り開示 中学生の娘を亡くした後も傷付く遺族

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亡くなった石沢準奈さん=遺族提供
亡くなった石沢準奈さん=遺族提供

 大切に育ててきた我が子が、ある日突然、学校で自ら命を絶つ。受け入れられない悲しみに沈む中「せめて何があったのかを知りたい」と願っても、学校や教育委員会から後ろ向きとしか受け取れない対応をされ続けたらどう感じるだろう。中学生の娘を亡くした両親への取材を重ねながら、同世代の子を持つ親として考えた。

げた箱に「死ね・キモイ」

 2021年9月。あるSNS(ネット交流サービス)の投稿に、胸が締め付けられた。「パパ悔しいよ。調査はしないと言われた。なぜ?」とつづられていた。その年の2月、山形県酒田市の市立中学校で、1年生だった石沢準奈(せつな)さん(当時13歳)が亡くなった。投稿はその父のものだった。

 「事情を聴きたい」と父に送った3度目のメッセージに返信があった。電話の先で、父は涙ながらに「隠蔽(いんぺい)です。改ざんです」と訴えていた。

 桜の下でおどけた表情。誕生日ケーキを前にはにかむ笑顔。両親が見せてくれた写真からはありふれた、でも幸せそうな家族の日常がうかがえた。バレーボール選手になるのが夢で、正義感が強く、家族思いの優しい子だったという。小学生の頃、雨の日に下級生に傘を貸し、ずぶぬれで帰宅したこともあった。中学では学級委員を務め、悪口を言われた級友に寄り添い、言った側の生徒をたしなめた。

 「焼香に来た同級生が口々に『助けてもらった』と言ってくれた。私たちの自慢の娘」と両親は口をそろえる。後日、自宅を訪ねると、ほほ笑む遺影の周りには、色とりどりの和紙で作った折り紙細工が飾られていた。月命日のたびに友人らが供えてくれるという。

 準奈さんが嫌がらせを受けるようになったのは、自殺の8カ月ほど前の20年6月ごろだったと両親は振り返る。「同級生からLINE(ライン)で悪口を言われる」と家でこぼすことがあった。同月、学校のいじめに関する定例アンケートに、母はこうした内容を記そうとした。準奈さんは「書かなくていいよ」と修正液で消したが、その後も他の保護者から同じような話を聞いた母は、同年11月のアンケートでは「いじめがある」と回答した。

 そして、21年2月12日が訪れる。父は仕事へ向かう際、自室から「行ってらー」と送り出す準奈さんの声を聞いた。それが最後の会話になった。病院に駆けつけると、娘は変わり果てた姿になっていた。

 混乱のさなか、両親は居合わせた警察官の一言に耳を疑った。「学校のげた箱に『死ね・キモイ』と書かれた紙が入れられていたそうですね」。初めて知る事実だった。

 「なぜ気付いてやれなかったのか……」。両親は悔やみ、守れなかった自分たちを責めた。その一方、娘が追い詰められた真相を知りたいとの思いも募った。

 いじめ防止対策推進法は、いじめで児童・生徒が生命や心身に重大な被害を受けた疑いのあるケースを「重大事態」と定義。調査を義務づけている。

 また国の指針では、子どもの自殺が起きた場合、全件について、指導記録の確認や教職員からの聞き取りを中心に学校が事実関係を調べる「基本調査」を実施。いじめが背景に疑われるケースや遺族の要望がある場合は、教委が主体となって中立的な第三者機関を設置し、経緯や原因を探る「詳細調査」を実施するとしている。

 市教委も、直後に重大事態と認定し、その後1カ月近く、学校関係者が自宅を訪れて家庭での様子を聞き取った。一方、両親からの「どんな嫌がらせがあったのか」「学校はどう対応したのか」といった問いには明確な答えはなかった。「いったん市教委に報告する」。21年3月ごろに校長からそんな趣旨の話があったと、両親は記憶する。

 しだいに家庭訪問の頻度も少なくなった。両親は4月以降も学校に「詳しく調査して」と求めてきたが、取り合ってもらえなかったという。夏になり、学校に問い合わせると「新たな事実がない限り、さらなる調査はしない」と告げられた。やり場のない思いを吐露したのが、あのSNSへの投稿だった。

届かなかった母の声 理由は「作業ミス」

 投稿後、学校の態度は一変した。…

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