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東日本大震災

2011年3月11日に発生した東日本大震災。復興の様子や課題、人々の移ろいを取り上げます。

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「妻返してくれ」東電訴える福島の男性 原発事故が奪った最愛の時間

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妻峰子さんの遺影を手にする今泉信行さん。仏壇の遺影は母ミヨノさんだ=福島県田村市都路町で2022年5月22日、根本太一撮影
妻峰子さんの遺影を手にする今泉信行さん。仏壇の遺影は母ミヨノさんだ=福島県田村市都路町で2022年5月22日、根本太一撮影

 長年連れ添った妻と、定年退職後に古里で農業に取り組んで自給自足――。満ち足りた暮らしは、予想もしなかった事態で台無しになり、妻は自ら死を選んだ。「私らは何か悪いことをしたのか」。福島県田村市の今泉信行さん(74)は、例えようのない怒りに突き動かされている。

 のどかな山林に囲まれた田村市都路地区。春に山菜、秋にはキノコがよく採れる。今泉さんはこの地で生まれ育ち、ずっと暮らしてきた。15年ほど前に会社を定年退職してからは、1ヘクタールの水田と10アールの畑を耕し、ほぼ自給自足の生活に。母と妻、長男夫婦と孫2人の7人で、穏やかな日々を過ごしていた。

 そんな暮らしは、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故によって一変した。震災発生の翌日、2011年3月12日。国は第1原発から20キロ圏内にある都路地区東部に避難指示を出し、市は地区全域に避難指示を出した。今泉さんらは自宅を離れ、避難生活を余儀なくされた。高齢で体が不自由な母は老人ホームに預け、同年8月に妻と市内の仮設住宅に入った。

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【東日本大震災】

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