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阪神大震災

1995年1月17日に発生した阪神大震災。戦後初の大都市直下型地震が残した教訓・課題は今――。

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被災地が育てた「まけないぞう」世界へ 阪神大震災10000日

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まけないぞう=被災地NGO恊働センター提供
まけないぞう=被災地NGO恊働センター提供

 1995年1月17日に発生した阪神大震災から3日で10000日目。街は様変わりし、震災の痕跡を確認することも難しくなった。だが、以後の災害被災地で、ボランティア活動は広がり、頻発する豪雨災害でも復旧復興に欠かせない存在となった。「1・17」を起点に、現在も続くボランティアの取り組みに、阪神の被災地で生まれた「まけないぞう」がある。今、国内に避難しているウクライナとロシアの人たちの支援に向けて活動は広がる。

タオル1枚がつなぐ縁

 1枚のタオルを折りたたみながら針と糸で整え、動物のゾウの頭部を作ってゆく。生地の色や印刷文字などが豊かな表情を与える。黒い小さなボタンの目をつけると、被災者の手作りによる壁掛け用タオルが完成する。

 27年前の震災後、各地の災害被災者らの支援を続ける「被災地NGO恊働センター」(神戸市兵庫区)が、まけないぞうの活動を始めたのは97年1月のロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」による重油流出事故がきっかけだった。阪神大震災では震災から1年間で兵庫県内に延べ137万人以上のボランティアが駆けつけ、「ボランティア元年」といわれた。うねりは続き、日本海沿岸部の油除去作業などに向かったボランティアは延べ約27万人に上った。

 その際、砂浜の油除去などにタオルが大きな役割を担った。支援の輪を知った兵庫県西宮市の高齢の被災女性が「タオルでゾウができるのよ」と当時暮らしていた仮設住宅で作ってみせたのがヒントになった。恊働センターは、被災者の生きがいづくりにつながると、完成したまけないぞうを1個400円で販売し、100円を作り手の収入源に、残りを材料費、輸送費などに積み立てる支援の循環を育んでいった。

 例えば「役立てて」と新品の1本のタオルが届く。ある被災者が思いを込め、まけないぞうをこしらえ、作られた被災地名のシールを付ける。購入者はその壁掛け用タオルを手にする。少なくても1個につき3者がつながりあう。

 震災3年後には多い月で1万個以上の注文も入り、生活の糧にするなど、これまで1000人以上の被災者が携わってきた。活動開始から今年で四半世紀を迎え、3月末現在で日本を含め55カ国・地域に計28万8052個が送り届けられた。海外からの直接購入に加え、日本の支援者が購入後、海外の被災地に送ったものも含む。

「おたがいさま」実感できるから

 「支え合いが双方向に生まれ、『おたがいさま』を実感できるような何かがあるんですよね。ぞうさんには……」。活動を中心的に担ってきた恊働センターのスタッフ、増島智子さん(51)=東京都出身=は語る。震災直後に被災地に駆けつけ、その後の人生を変えた一人だ。98年、神戸に移住後、2…

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