「話しやすくなりたい」付箋書く14歳の願い 人口の1%の障害

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
中村陸さん(仮名)が吃音への思いを記した付箋=川崎市内で2022年5月20日、遠藤大志撮影
中村陸さん(仮名)が吃音への思いを記した付箋=川崎市内で2022年5月20日、遠藤大志撮影

 言葉を発する際に最初の一音が出にくかったり、繰り返したりする吃音(きつおん)=どもること=は、日本では100人に1人が持つとされる。幼いころに発症し、学びの場でいじめを受けたり、孤立を深めたりするケースは多い。当事者たちを訪ね歩きながら、教育現場での課題や配慮のあり方を考えてみたい。【東京社会部/遠藤大志】

 「今日の吃音の重さは1~10でいえば、7くらい。まあまあ、話しやすいほうです」

 川崎市内にあるカフェ。中学3年の中村陸さん(14歳、仮名)は、テーブルを挟んで向き合う記者の質問に筆談で応じてくれた。メモ代わりに持ち歩く四角い付箋の束をはがしては、シャープペンシルで字をつづった。

 吃音には、連発(わわわたしは)、伸発(わ―――たしは)、難発(………わたしは)の症状がある。陸さんは、最初の一音を繰り返す「連発」がある。日によって波があり、症状が重いときは、うまくしゃべれず、意思疎通に時間がかかる。このため通っている川崎市立の中学校では、授業時間を含めて、タブレット端末などで筆談をするなどの配慮を受けている。

 「小学生のときよりは症状は軽くなっているけれど……。少しでも話しやすくなりたいとは今も昔も思っています」。隣に座った母さやかさん(47歳、仮名)は、付箋にびっしりと書かれた文字をじっと見つめていた。

小4で発症 同級生にからかわれ

 陸さんに吃音の症状が表れたのは、小学4年生のころだった。「あ、あ、あのね……」。最初は母音を数回繰り返すほどだったが、次第に重くなった。自分に何が起きているのか分からず、原因も心当たりはなかった。さやかさんも、うまく言葉が出てこないことには気付いていたが、「吃音」という言葉すら知らず、息子の異変に戸惑うばかりだった。

 学校では、同級生たちから、からかわれる日々が続いた。「『あああああ……』とまねされることもありました。悲しいし、怒りも出てきました」。出口が見えず、いつも気は沈んでいた。

 さやかさんは、陸さんの症状について学級担任に相談した。「何か打ち込めるものが見つかれば治るのでは」との言葉が返ってきた。…

この記事は有料記事です。

残り3038文字(全文3921文字)

あわせて読みたい

ニュース特集