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新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」によってデビューして以来、マニア心をくすぐる意欲的な本格ミステリーを発表している若手作家が阿津川辰海である。長編は年間ベストテン企画の常連という実力者。短編にも定評があることは、第2短編集の本書『入れ子細工の夜』(光文社)を読めばご理解いただけるだろう。
互いに腹に一物を持った作家と編集者とのスリリングなやりとりを描いた表題作は、アンソニー・シェーファー脚本の大傑作映画「探偵≪スルース≫」へのオマージュがたっぷりと詰まった舞台劇のような作品だ。相手を罠(わな)にかけようとする攻防が続き、状況が次々に一変していく。オーバースペックなほど詰め込まれた逆転劇が楽しい。
「危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~」は、古書店を舞台にミステリーに関する蘊(うん)蓄(ちく)があふれ出る、ハードボイルドタッチの一編。お手本にしたのは若竹七海の葉村晶シリーズだ。
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