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島根原発が再稼働へ 避難計画は現実的なのか

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 中国電力島根原発2号機が来年度にも再稼働する見通しとなった。島根県の丸山達也知事が同意し、必要な手続きが整った。

 昨年9月、原子力規制委員会の審査を通り、島根県のほか、原発が立地する松江市と、30キロ圏内にある島根、鳥取両県の6自治体も同意している。

 だが、地元の不安が完全に払拭(ふっしょく)されたわけではない。

 丸山知事は「原発はなくしていくべきだが、再稼働は現状、やむを得ない。苦渋の判断だ」と胸中を明かした。鳥取県の平井伸治知事も「今後も厳しく安全性をチェックする」とコメントした。

 とりわけ懸念されるのが、事故時の避難計画に実効性が乏しいことだ。

 30キロ圏内に約46万人が暮らす。事故が発生した場合、まず5キロ圏内から避難を開始し、段階的に対象地区を広げていく計画だ。しかし、住民への周知は十分とはいえない。

 避難先は、広島、岡山両県にも及ぶ。地震や津波、台風などとの複合災害が起きれば、ルートが断たれる事態も想定される。

 約6800人を受け入れる予定の広島県庄原市議会は今年3月、計画の実効性に課題があるとして、再稼働反対を決議した。

 島根原発は全国で唯一、県庁所在地にある。事故時に司令塔となる県庁まで、わずか8・5キロしかない。避難指示が出た場合、原発の南西約30キロに位置する同県出雲市に司令塔機能を移す予定だが、スムーズに進まない恐れがある。

 住民の避難を巡っては、水戸地裁が昨年3月、茨城県の日本原子力発電東海第2原発について、「実効性のある避難計画が整えられていない」として、運転差し止めを命じる判決を出した。

 ロシアのウクライナ侵攻後、世界的なエネルギーの供給不安が起き、政府内では原発の活用を求める声が上がる。だが再稼働は、たとえ事故が起きても住民の安全を守る手立てが整えられていることが前提となる。

 にもかかわらず、避難計画の策定は自治体に委ねられ、規制委の審査対象になっていない。実行可能なものになっているか、政府が責任を持って確認する仕組みを検討すべきだ。

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