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EU加盟しながら対露制裁に反対 なぜハンガリーは融和的なのか

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欧州連合の対露制裁発動に難色を示してきたハンガリーのオルバン首相。ロシアのプーチン大統領との近い関係も指摘されてきた=ブリュッセルで5月30日、ロイター
欧州連合の対露制裁発動に難色を示してきたハンガリーのオルバン首相。ロシアのプーチン大統領との近い関係も指摘されてきた=ブリュッセルで5月30日、ロイター

 原油の禁輸を柱とする欧州連合(EU)の対露追加制裁が4日、発動されたが、加盟国の一つハンガリーから強い抵抗に遭い、部分的な禁輸で妥結した。さらにハンガリーの反対を受け、ロシア正教会の最高指導者への制裁も見送られた。ハンガリーがロシア制裁を巡り、ここまでEUの方針に異議を唱えたのはなぜなのか。

 「残念ながら、一つの加盟国によって(欧州)連合全体が人質に取られてしまっている」。5月16日、ハンガリーの反対で露産原油禁輸を含む制裁案がまとまらない中、ロシアへの警戒感を強めるリトアニアのランズベルギス外相が、そう心情を記者団に吐露した。

 ハンガリーのオルバン首相は「制裁案はハンガリー経済に対する核爆弾投下だ」などと強い言葉を使って反発し、全面的な露産原油の禁輸に応じない姿勢を貫いた。包括的な制裁案をまとめるためEUは一部パイプラインによる原油輸入の継続を認めたが、ハンガリーは最終局面でロシア正教会トップのモスクワ総主教キリル1世への制裁発動でも反対に回った。

民族主義を利用、長期政権築く

 ハンガリーのかたくなな姿勢には、露産原油に依存する経済事情だけでなく、根深い背景がある。

 オルバン氏は、1998年に初めて首相に就任したが、2002年に一度下野。10年に首相に戻った後は長期政権を維持する。「ハンガリー民族主義」を強調し、支持を拡大してきた。今年4月の総選挙でも、自身が率いる右派政党フィデス・ハンガリー市民連盟などの与党連合が勝利した。

 国内でメディアなどへの圧力を強め強権体制を固めてきたオルバン氏は、西欧型の自由民主主義に対抗し、「非自由民主主義」を掲げる。その国家建設のモデルの一つとしているのがロシアだ。これまでプーチン露大統領と親密な関係を築いてきたことも、融和的な姿勢につながっているとみられる。

 オルバン氏が打ち出す「ハンガリー民族主義」の根底にあるのが、キリスト教文化に基づいた伝統や価値観で、政権はことあるごとにこの重要性を強調してきた。

キリスト教の価値観と反ウクライナ感情

 国家としてのハンガリーは西暦1000年、キリスト教化を進めカトリックの聖人にも列せられたイシュトバーン1世によるハンガリー王国建国に端を発する。このため、オルバン政権には「ハンガリーの歴史にはキリスト教が深く根ざしており、キリスト教文化を守らねばならない」との考えが強くある。

 オルバン政権は、中東などから大量の難民らが欧州に渡ってきた15年の欧州難民危機の際、国境にフェンスを設置して国内流入を拒絶。「反移民」姿勢も鮮明にしてきた。オルバン氏は難民らを「イスラムの侵入者」と呼んだこともあり、根っこには政権の考えるキリスト教文化の保護という思想がある。同様に性的少数者に対しても伝統的な家族の価値観という観点から圧力を強め、EUなどから批判を受けている。

 今回、キリル総主教を制裁リストから除外するよう要求したのは、「自称カトリックとキリスト教保守的価値観の擁護者」(英紙タイムズ)のオルバン氏にとって、国内外の保守派へ…

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