中露に拒否権行使の説明求める 対北朝鮮制裁めぐり国連総会で初

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拒否権の行使について国連総会で説明する中国の張軍国連大使=米ニューヨークの国連本部で2022年6月8日、国連のウェブTVより 拡大
拒否権の行使について国連総会で説明する中国の張軍国連大使=米ニューヨークの国連本部で2022年6月8日、国連のウェブTVより

 対北朝鮮制裁を強化する国連安全保障理事会(15カ国)の決議案が常任理事国の中露の拒否権行使で廃案になったことを受け、国連総会(193カ国)は8日午前(日本時間8日深夜)、中露に拒否権行使の理由の説明を求める会合を開いた。

 この制度は、安保理の常任理事国が特権として持つ拒否権を行使した場合、全加盟国が集まる国連総会で説明責任を果たすよう促すもので、国連総会が4月に創設を決定。今回が初の適用事例になった。70カ国・地域以上が演説する予定だ。

 中国の張軍国連大使は、現段階では制裁強化ではなく安保理の見解を示す議長声明にとどめるべきだと主張。「米国は決議案の採決を主張し、意図的に対立を生み出した。安保理で意見の一致がない中、私たちは拒否権を行使するしかなかった」と強調した。ロシアの次席大使も、北朝鮮が「敵対的な行動をやめるよう米国に求めている」とし、それを西側諸国が「無視している」と同調した。

 北朝鮮に対する安保理の制裁決議は2017年に採択されたのが最後。その後、北朝鮮は安保理決議違反である弾道ミサイルの発射を繰り返してきたが、安保理は中露の反対で一致した対応をとれない状態が続いている。

 小田原潔・副外相は演説で、拒否権行使に関する中露の主張について「私たちが期待していた説明責任には遠く及ばない」と指摘。弾道ミサイルが海岸線からわずか150キロ先に落ち、領土の上を飛ぶ状況を想像してほしいと強調し、「(行動がとれない)安保理はその信頼性が危機にさらされている」と訴えた。

 相次ぐ弾道ミサイルの発射に対し、安保理は5月26日、北朝鮮の対外工作機関傘下のハッカー集団「ラザルス」の資産凍結や北朝鮮への原油輸出量の上限を減らすなどの制裁強化決議案を採決にかけた。しかし、逆に制裁緩和を求めている中露は拒否権を行使し、06年以降の一連の制裁決議案としては初の廃案になった。

 安保理では2月25日、ウクライナ侵攻でロシアを非難し、軍の即時撤退を求める決議案にロシアが拒否権を行使した。人道状況の改善を訴える決議案も、ロシアの拒否権を背景に安保理での採決が見送られた。主権国家が侵攻され、戦争犯罪も疑われる事態に対し、安保理が身動きできないことに加盟国からは改善を求める声が高まった。

 説明を求める制度の創設は、リヒテンシュタインが主導。国連総会議長に対し、常任理事国が拒否権を行使した場合は10日以内に公式会合を招集するよう義務付けている。拒否権の行使国に説明は義務付けられていないが、優先的な発言権が与えられる。一方で、制度は国連憲章の改正が必要な拒否権の制限などには踏み込んでいない。

 リヒテンシュタインの国連代表部は7日、ツイッターで「拒否権行使によって生み出された状況に対し、それぞれの立場を表明する機会だ」と指摘し、多くの加盟国に議論に加わるよう呼びかけた。【ニューヨーク隅俊之】

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