障害あっても地域の学校へ 就学の悩み、先輩がアドバイス冊子 西宮

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「インクルネット西宮」代表の鍛治克哉さん=兵庫県西宮市で2022年5月22日午後0時17分、桜井由紀治撮影 拡大
「インクルネット西宮」代表の鍛治克哉さん=兵庫県西宮市で2022年5月22日午後0時17分、桜井由紀治撮影

 地域の学校を希望する障害のある子と保護者を支援する団体「インクルネット西宮」(兵庫県西宮市)が、就学前の子どもを抱える保護者のために冊子「障害のある子どもの小学校入学ガイド」を作成した。入学準備から学校生活まで予想される問題や悩み、不安に対して、実際に我が子を学校に通わせる母親5人が、自分たちの体験を基にQ&A方式でアドバイスしている。重度脳性まひの障害当事者で、代表の鍛治克哉さん(38)は「障害児を健常児と分ける分離教育は、社会の分離につながる」と、障害があってもなくても同じ学校で学ぶ必要性を訴える。【まとめ・桜井由紀治】

 2016年に医療的ケアが必要な女の子が地域の小学校に行きたいという切実な声を聞き、私たちは支援を始めました。女の子は「胃ろう」が欠かせず、看護師配置が必要です。当時、看護師配置を伴って地域の学校に通う児童は誰もいませんでした。市教委と何度も話し合いをして、看護師配置を実現させ、女の子は地域の小学校で6年間過ごしました。今、彼女は中学1年生です。

 彼女の小学校入学前に医療的ケア児を応援するグループ主催で開いた集会でも、参加した保護者から、重度障害の子が「訪問教育相当」と言われて学校には週2日しか行けないといった声もありました。障害のある子の人権が守られ、共に学べる西宮であってほしい。そんな願いを込めて「インクルネット西宮」を設立しました。メンバーには、保護者の他、障害当事者や教師、相談支援専門員もいます。

「障害のある子どもの小学校入学ガイド」=2022年5月22日午前8時48分、桜井由紀治撮影 拡大
「障害のある子どもの小学校入学ガイド」=2022年5月22日午前8時48分、桜井由紀治撮影

保護者に「道しるべ」届けたい

 この6年間、就学相談会を中心に活動してきました。当初はなかなか聞き入れてくれなかった市教委も共に学ぶ環境整備に取り組み、少しずつ改善されてきました。保護者が「通常学級に行かせたい」と希望すれば実現するようになりました。しかし、今でも「地域の学校に行けるんですか。知りませんでした」と言う保護者がいます。情報が入らず、悩む保護者に希望を持ってもらえるような「道しるべ」を届けたいという思いが、冊子を作る出発点でした。

 大阪で「障害のある子どもの小学校入学ガイドQ&A」が作られているのを知り、自分たちもこんな冊子を作ろうと、今学校に我が子を通わせているお母さん5人がワーキンググループを結成しました。何度も内容の検討を重ねて執筆、2年半越しに完成させました。

「障害のある子どもの小学校入学ガイド」から、ヘルパーや友達と一緒に動物園へ行く障害のある子=インクルネット西宮提供 拡大
「障害のある子どもの小学校入学ガイド」から、ヘルパーや友達と一緒に動物園へ行く障害のある子=インクルネット西宮提供

 この冊子の特徴は、保護者の体験談がたくさん載っていることです。先輩のお母さんたちが、自分の子の場合はこんなふうにして解決できました、こんなことが大事なんですよ、そんな思いが詰まった冊子です。

 そもそもどうやって学校を決めるのか。子どもを地域の学校に行かせたいと思っても、いろんな不安が出てきます。それに対して、丁寧にQ&A方式で説明しています。

 地域の学校に入学すれば、みんなと同じ学校生活になります。授業はどうやったらいいのか。休み時間であったり、給食であったり、校外活動もあります。兵庫県では5年生になったら、自然学校があります。6年生では修学旅行です。他にも運動会、音楽会などいろんな行事があります。障害を持つ子どもたちがどうやったら参加できるのか、先輩お母さんは体験をつづっています。

 学校の先生とのコミュニケーションも課題です。自分の子どもの障害のことを分かってもらえるのだろうか、どうやって伝えていったらいいんだろうか。そんな不安にも応えています。

 障害の特性の紹介も、短い時間で分かりやすく説明するための工夫例があります。例えば、発達障害は一見、分かりづらい。そうした時には、あらかじめ何が得意で何が苦手か、そんなことを書式で伝えたら、学校とのコミュニケーションもスムーズにいきますよ、とアドバイスしています。

 書店には専門誌がいっぱい並んでいますが、専門家の視点で書かれたものばかりです。保護者や子どもの立場で具体的に事例紹介している冊子は、なかなかありません。

 冊子は西宮市の保育所や幼稚園、相談支援事業所などさまざまな関係機関に郵送しました。多くの人たちに読んでいただきたいというのがお母さんたちの思いです。

 この冊子を読んだという名古屋市の女性が、オンラインで私たちのイベントに参加しました。人工呼吸器を着けた難病の双子の姉妹を抱えたお母さんです。ガイドにはいろんなヒントがあり、とても勉強になったという感想をいただきました。冊子を中心にして、輪が広がっていきます。

 学校は社会の縮図です。障害のある子と健常児を分ける分離教育こそがおかしい。地域の学校に通うのは当然の権利です。16年7月、相模原市障害者施設殺傷事件を起こした死刑囚は「障害者は生産性がない」と言いました。この言葉は、重度脳性まひの私に向けられた言葉でもあります。教育にアプローチしていかないと、世の中は変わっていきません。一人で悩まず、一緒に考えていきましょう。

障害のある子どもの小学校入学ガイド

 A5判90ページ。カラー。赤い羽根共同募金の助成を受け、1500部発行。問い合わせは「インクルネット西宮」(inclunet.nishinomiya@gmail.com)

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