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性暴力に傷つき、2次被害に苦しみ、15年たった今も癒えない。理不尽さは計り知れない。
取材中に長崎市の男性部長から性暴力を受けた女性記者が起こした裁判で、長崎地裁が市に賠償を命じる判決を出した。
判決は、部長が取材に協力するかのような態度を示しつつ、性暴力に及んだと認定した。取材先の意向を拒否しがたい記者の事情につけ込んだものだと結論づけた。
職務に関連する行為で取材活動に支障を生じさせたとして、市の賠償責任を認めた。
記者は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、休職を余儀なくされ、以前のように働けなくなった。
さらに、「合意の上だった」など、事実ではない情報が週刊誌で報じられ、中傷にさらされた。部長と親しい市幹部が、週刊誌の取材などで話していた。
こうした2次被害についても、判決は市の責任を認めた。職員の言動で更なる被害が生じないよう配慮すべきだったにもかかわらず、指導を怠ったと指摘した。
批判されるべき点は、これにとどまらない。
市は裁判で「前にも部長からセクハラを受けたことがあるのに、記者が取材を優先して適切な対応を取らなかった」と主張した。
性暴力で責められるべきは、加害者である。だが社会には、被害者にも落ち度があるのではないかとの偏見が根強い。市の主張は、そうした誤った見方を助長しかねず、不適切なものだ。
田上富久市長は控訴しない方針を表明し、「記者に謝罪したい」と述べた。再発防止策を講じる意向も示した。
長らく問題を直視してこなかったことが、被害を拡大させた現実を重く受け止め、真摯(しんし)に対応しなければならない。
女性記者が取材先からセクハラを受ける事例は後を絶たない。表面化しないケースもあるだろう。
採用担当者と就職活動中の学生、監督と俳優、上司と部下、教師と生徒など、他にも似たような関係性の中で被害が起きている。
立場を悪用した性暴力やセクハラは許されない。根絶のための取り組みを社会全体で進めなければならない。