NOと言えても性被害に ヤン ヨンヒさん「怒り爆発」明かした体験
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「性暴力について、『嫌ならNoと言えばいい』とか聞こえてきて怒り爆発してる」。日本の映画界で告発が相次ぐ性暴力の問題に、「かぞくのくに」「ディア・ピョンヤン」などの作品で知られる映画監督、ヤン ヨンヒさんはそうツイートした。「権力も腕力もあり、仕事での決定権もある人間が弱い立場の人に迫っておいて、嫌ならば断ればいいとか、性的同意があったかを問うなんてナンセンス」。ヤンさんは自らの複数の性的被害体験を明かしたうえで、こう問いかける。「映画界がクローズアップされていますが、映画界だけの問題でしょうか?」【宇多川はるか】
「ノー」抵抗の声、ちゃんと聞いてくれますか
ヤンさんが「怒り爆発してる」とツイッターに投稿したのは4月6日。「嫌ならNoと言えばいい」という声に対し、「じゃあ『ノー』と言ったからって、その『ノー』が受け入れられますか。怖くて、固まって、絞り出すように言う小さな『ノー』から、ちゃんと聞いてくれますか、と問いたい」と反論する。
相次ぐ告発で日本映画界を覆う性暴力の問題。新作「スープとイデオロギー」の公開を控えていたヤンさんに改めて話を聞くと、自身が「ノー」と言い続けてきた10代からの記憶と、告発に踏み切った人たちへの思いがあふれ出てきた。
「私は自分で映画を作るぐらいに自己主張の強い人間ですから、基本的に『ノー』は言えたんです。小さい声でも、大きい声でも、『ノー』と言い続けてきました。でも、言っても聞いてくれない。その中で、私は本当に、プロレスのように相手に抵抗し、蹴飛ばして、逃げてきた体験をいくつも重ねてきたんです」
自身が体験した複数の被害を語ってくれたヤンさん。それは「自分のように『ノー』と言える性格でも、複数の性的被害体験を持つことが決して珍しいことではないと分かってほしい」という思いからだ。
そして続けた。「性暴力は、映画界だけでなく、多くの学校や職場、そして家庭にあります。でも、隠蔽(いんぺい)され、口封じされ、被害者に責任があるかのように洗脳され、被害が見えてきません。力の強い人間が弱い立場の人に迫っておいて、性的同意の有無を問うのは、性犯罪に寛容で野蛮な発想です。社会全体の常識を底上げするのが急務だと危機感を持って訴えたい」
笑いながら「言えないくせに」
性暴力は身近な知人が加害者になるケースが少なくない。「私もやっぱりそうでした」とヤンさんは明かす。20代のころ、両親の知人男性に襲われたことがある。笑いながら…
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