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点字新聞「点字毎日」(点毎)の古紙を再利用した雑貨づくりに、商業デザインを学ぶ学生たちが視覚障害者らと協力して挑んでいる。視覚障害者でも容易に作ることができる雑貨を目標にしており、学生たちは「点字紙をそのまま捨ててしまってはもったいない。再利用で実用的なものを作る事で、視覚障害への理解を深めるきっかけになればうれしい」と話している。
挑んでいるのは名古屋デザイナー学院(名古屋市中区)のプロダクトデザイン学科2年の学生約20人。同校は2021年5月から、授業の一環として視覚障害者の支援に取り組む社会福祉法人「岐阜アソシア」(岐阜市)と協力している。
点毎は5月に創刊100周年を迎えた、毎日新聞社が発行する日本唯一の点字新聞で、岐阜アソシアでは十数年前から点毎を再利用して、利用者らが封筒づくりなどに取り組み、販売もしている。
点字用紙は厚手で質感もよく耐久性があるのが特徴で、どの学生も初めて手に触れる素材だった。学生らは「折り紙のように加工しやすそう」「点字部分が滑り止めによさそう」「白色しかなくさみしい」など意見を出し合い、21年度は眼鏡ケースや髪飾り、ペーパークラフトなど5作品を完成させた。
一方で、完成した作品はいずれも視覚障害者が作るには難しかった。学生らは岐阜アソシアを訪問。視覚障害者から直接話を聞くと、視覚障害者にとっては紙を切り、折ることだけでも多くの困難が伴うことを知らされたという。
2年目の今年は、単に作品を作るだけでなく、視覚障害者でも容易に作ることができる制作方法を考えている。紙コップの外側を覆う「カップスリーブ」を開発中の佐古七斗さん(19)は「目が見えないと、細かく折ることは難しい。容易な折り方を考えている」と話す。安全で簡単に紙を切るための道具も3Dプリンターなどを駆使して考案中という。
将来的には、考案した作品を、視覚障害者が小学校などで作り、子どもに点字や視覚障害について知ってもらう体験会も開催したい考えだ。
岐阜アソシア職員で全盲の藤田亜希さん(46)は「私たちでは思いつかない作品を学生が提案してくれるのでありがたい。作品を通じて点字への理解が広がってほしい」と期待する。商品化を実現し、視覚障害者の就労支援にもつなげていきたいという。【川瀬慎一朗】