心神喪失で容疑者不起訴の事件、情報開示を 遺族がシンポ

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「加害者だけでなく、被害者のフォローも必要だ」と約80人の来場者を前に訴える大森真理子さん=東京都千代田区の弁護士会館で2022年6月15日午後7時54分、志村一也撮影 拡大
「加害者だけでなく、被害者のフォローも必要だ」と約80人の来場者を前に訴える大森真理子さん=東京都千代田区の弁護士会館で2022年6月15日午後7時54分、志村一也撮影

 心神喪失を理由に容疑者が不起訴となった事件の情報が被害者側に十分に提供されない現状を考えるシンポジウムが15日夜、東京都千代田区の弁護士会館で開かれた。主催した「医療観察法と被害者の会」代表の大森真理子さん(55)は、殺人事件で夫を亡くし容疑者が不起訴となった自身の経験を語り、「遺族でも知る権利はほとんど認められていない。情報開示の範囲拡大が必要だ」と訴えた。

 大森さんはこれまで氏名を出さずに活動してきたが、今回初めて公の場で講演することが決まり、名前を公表した。夫の信也さん(当時46歳)は施設長を務めていた児童養護施設で2019年2月、包丁で複数回刺されるなどして亡くなった。元入所者の20代男性が殺人容疑で警視庁に逮捕されたが、東京地検は精神鑑定の結果、「刑事責任は問えない」と判断し、同年5月に不起訴とした。

 男性は、心神喪失者等医療観察法に基づき、東京地裁の審判を経て、指定医療機関に入院した。大森さんは地裁の審判期日で傍聴は認められたものの、裁判官らと男性のやり取りを聞くだけで、意見を述べたり、直接質問したりすることはできなかった。

 大森さんは、地裁から届いた傍聴許可通知書に「(男性の)社会復帰を妨げる行為をしないこと」と記載されていたことを振り返り、「どうして邪魔者のような言われ方をしないといけないのか。涙が出た」と語った。

 また、地検や地裁に事件記録の情報開示を請求したが、ほぼ全て黒塗りだったとし、「事件の整理ができず、なかなか前に進めなかった。被害者が望めばきちんと情報開示される制度となり、同じように苦しむ人がいなくなることを願っている」と訴えた。

 「新全国犯罪被害者の会」事務局長の米田龍玄弁護士も講演し、医療観察法には被害者に関する規定がほとんど定められていないことを挙げ、「被害者が事件について知りたいと思うのは当然のこと。医療観察法は旧時代的だ」と批判した。国立病院機構久里浜医療センターの西岡直也司法病棟部長は「被害者や遺族に何ができるのか、加害者自身が考えて内省を深めている」などと治療の現場の状況を説明した。【志村一也】

心神喪失者等医療観察法

 殺人や放火などの重大事件で心神喪失・耗弱を理由に不起訴や無罪となった加害者について、再発防止や社会復帰などを目的に国が指定する医療機関への入院や通院といった処遇を認めた法律。2001年の大阪・池田小児童殺傷事件を契機に05年7月に施行された。検察からの申し立てを受けた裁判所が、裁判官と精神保健審判員(医師)の合議体による審判で処遇を決める。

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