コロナで公演2年延期 むなしさを乗り越えた「怪演」俳優

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「葡萄酒いろのミストラル」で熱演する千田剛士さん=シアターキューブリック提供。舞台写真:宮内敏行 拡大
「葡萄酒いろのミストラル」で熱演する千田剛士さん=シアターキューブリック提供。舞台写真:宮内敏行

 新型コロナウイルスの感染拡大で、人が集まる文化である演劇の多くは中止や延期を余儀なくされ大きな打撃を受けた。

 「まちを遊園地へ!」という言葉とともに銚子電鉄などのローカル鉄道や銭湯なども「舞台」に活動してきた劇団「シアターキューブリック」(東京都墨田区・緑川憲仁代表)は、旗揚げ20年を記念した二つの公演が延期に。6月1日に2年遅れで第2弾の「葡萄酒(ぶどうしゅ)いろのミストラル」の劇場公演を終え、区切りをつけた。コロナ禍でも舞台への情熱を失わず、時に「怪演」とも呼ばれる鬼気迫る演技を見せた千田剛士さん(46)に話を聞いた。

千田剛士さん=東京都内で2022年5月22日、米田堅持撮影 拡大
千田剛士さん=東京都内で2022年5月22日、米田堅持撮影

 旗揚げ20年を記念した第1弾の「幸せな孤独な薔薇(ばら)」公演は2020年4月からだったが、コロナ禍で翌年5月からとなった。千田さんは「作品を作るには、非常に時間もお金も人もかかり、思いが募っていく。それが、かすみのようにするりと消えていく出来事に強いむなしさを感じた」と振り返る。劇中で千田さんは、実年齢よりも老け役となる園丁の鬼気迫る演技は、文字通りの「怪演」で多くの観客を魅了した。

 続く「葡萄酒いろのミストラル」は2度延期されたが、千田さんは「作品は前進していたし、また上演すると思っていた」から絶望はしなかった。この作品では、宮沢賢治の故郷、岩手・花巻を目指す一匹の犬の冒険をサポートする馬の役を激しく動き回りながら演じきった。

 「演劇は僕にとって、いきいき生きるための、大事な手段」と話す千田さん。少年時代から、学芸会や運動会などが好きだったという。大学に入学した頃にテレビで見た俳優座版「アドルフに告ぐ」の劇場中継を見て俳優を志し、今も目標にしている。

 大学卒業後は「シアターキューブリック」旗揚げのオーディションに合格、「歌やダンスは得意ではなかった」という理由で役を愚直なまでに演じきることに徹してきた。劇団代表の緑川さんは千田さんを「演出家的才能を持った稀有(けう)な存在」、共演した奥山静香さんは「唯一無二の個性派俳優」と表現する。

「葡萄酒いろのミストラル」の公演に向け、けいこに臨んだ千田剛士さん=東京都内で2022年5月22日、米田堅持撮影 拡大
「葡萄酒いろのミストラル」の公演に向け、けいこに臨んだ千田剛士さん=東京都内で2022年5月22日、米田堅持撮影

 千田さんの夢は、演劇を見に行くことが休みの日の楽しみの一つとなり、子どもたちの将来の夢に俳優や劇作家、舞台スタッフがランクインし、演劇が義務教育の教科に入ることだという。「デジタル社会が進んでいる現代だが、その良さを享受しながらも、演劇のようなアナログの良さもこれまで以上に再認識していってもらえたらうれしい」と語る。【米田堅持】

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「葡萄酒いろのミストラル」で熱演する千田剛士さん=シアターキューブリック提供。舞台写真:宮内敏行 拡大
「葡萄酒いろのミストラル」で熱演する千田剛士さん=シアターキューブリック提供。舞台写真:宮内敏行

 コロナ禍で各劇団はオンライン配信に力を入れ、「葡萄酒いろのミストラル」も9日から配信を開始している。千田さんは「汗も吐息も感じられ、臨場感たっぷりで劇画映画みたいだ」とPRに余念がない。「オンライン配信を見て演劇に興味を持ってもらえたら、アナログで、不可解で、だけどみんなそこにある事を知っている劇場という空間にも足を運んでほしい」と笑顔を見せた。

 オンライン配信の申し込みは劇団のホームページ(https://qublic.net/info/post_56.html)から。観覧料は4000円、30日まで。

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