「国の怠慢さ判断せず」 過失問う壁高く 原発避難者訴訟
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東京電力福島第1原発事故に対する国の賠償責任を否定した17日の最高裁判決は、1、2審とは異なる論理で結論を導き、国の過失を問うハードルの高さを改めて示した。未曽有の大津波による事故で国は原子力規制の在り方を見直したが、避難を続ける人たちへの賠償は十分と言えるのかという課題は残る。
「司法がこんなことでは」
「国の怠慢さについて判断を示さずに終わりにした。司法がこんなことでは、また事故を起こす」。判決後に開いた記者会見で、避難者弁護団の南雲芳夫弁護士は怒りをにじませた。
17日の最高裁判決は、国の規制権限不行使の違法性について1、2審が「権限を行使しないことの合理性」の判断に重点を置いたのに対し、「権限不行使と事故発生との関係」に着目した。最高裁はこの関係性を最初に否定したことで、津波を予見できたか(予見可能性)には触れないまま、国の賠償責任を否定する結論を導いた。
1、2審は、津波の予見可能性の判断を重視した。東電は2008年に最大の高さが15・7メートルの想定津波を試算したが、これは02年に政府の研究機関が公表した地震予測「長期評価」に基づいていた。マグニチュード(地震の規模、M)8クラスの津波地震が福島県沖を含む日本海溝沿いで30年以内に20%程度起きるという内容で、地震学者からは「領域設定に無理がある」との異論もあった。このため訴訟では、長期評価の信頼性を巡って避難者側と国側が激しく議論を戦わせた。
今回判決が出された4件の訴訟のうち、福島、千葉、松山訴訟の2審判決はいずれも長期評価の信頼性を積極的に評価し、国は科学的知見を顧みずに東電を規制しなかったとして、その対応を「著しく不合理」と断じた。一方、最高裁は長期評価の信頼性については明確に判断を示さず、事故前に対策を講じていれば原発事故を回避できたか(結果回避可能性)を中心に検討した。
その上で、東電が事故前に想定した原発への津波による浸水の深さは最大約2・6メートルだったが、実際には5・5メートルに及んだと指摘。原発の南東側から来ると想定していた津波は実際は東側からも到来して大量の海水が原発敷地に入ったとし、事故を防ぐことがいかに難しかったかを強調した。
今回の訴訟では、国策として原発を推進する国が東電に過剰に配慮する姿も明らかになった。原子力…
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