精巧な偽サイト、知人装うメール…ネット犯罪どう防ぐ?地方警察の今

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埼玉県警サイバー犯罪対策課の松尾直樹課長=さいたま市西区の県警機動センターで2022年6月13日午前11時18分、平本絢子撮影 拡大
埼玉県警サイバー犯罪対策課の松尾直樹課長=さいたま市西区の県警機動センターで2022年6月13日午前11時18分、平本絢子撮影

 サイバー空間の脅威が高まる中で、個人や企業のセキュリティー対策が急務となっている。国境を越えた犯罪も多く、警察庁は他国と連携した捜査の推進に力を入れる。同庁出身で埼玉県警サイバー犯罪対策課の松尾直樹課長(42)に、近年のサイバー空間を巡る情勢と対策を聞いた。【平本絢子】

世界中から狙われ気づかぬうちに被害に

 ――近年のサイバー犯罪の傾向について教えてください。

 ◆インターネットやスマートフォンが社会生活に欠かせなくなる中、犯罪者はインターネットを便利に使い、低コスト、低リスクで犯行に及ぶことができます。2021年に県警に寄せられた相談件数は過去最多となり、県民の皆さんも常に危険にさらされ、不安に感じていると思います。誰しもが世界中のどこからでも狙われ、気づかぬうちに被害に遭う可能性があります。

 中でも気をつけるべきなのは、フィッシングです。多くの人が個人で複数のサービスに登録しており、一度パスワードを盗まれると他のサービスも不正利用されてしまいます。偽サイトは本物と区別がつかないほど精巧で、見分けることが難しいです。パスワードを入力する際は慎重に、どこに情報が送られるか意識することが大事です。

 もう一つ警戒すべきなのがコンピューターウイルスです。一度感染すると個人情報を抜き取られ、感染が拡大することもあります。

 ――身代金要求型ウイルス「ランサムウエア」や、偽メールに添付されたファイルを通じて感染するウイルス「Emotet(エモテット)」の被害も目立ちます。

 ◆Emotetの多くは、メールの添付ファイルを開いた際に感染させる手口です。知人を装い、本当のやり取りをしているかのようなメールで、見破るのは困難なため、送信者には別途確認を取ることが必要です。ランサムウエアでは、システムの脆弱(ぜいじゃく)性を突いて感染させる場合もあり、常に最新のバージョンを使用するよう心がけてほしいです。

 ――県警の取り組みを教えてください。

 ◆犯罪の手口の解明や検挙もそうですが、迅速な被害防止策の発信や情報提供は、捜査する警察だからこそできると思います。広報やイベント、SNSでの情報発信も重視しています。産学官で連携し、一つでも多く被害を防ぎ、検挙できるよう努めています。

 また、新しい社会の安全安心を守るための組織作りや、人材育成も力を入れたいと考えています。2013年に埼玉県警に出向した際に、捜査の専門知識を持った警察官を指定する「iCop(アイコップ)制度」の創設に関わりました。良い人材は多くいますが、得意分野はさまざまです。個々の強みを伸ばしながら、県警全体の底上げをして捜査に従事できる層を厚くすることも重要だと感じています。

 ――警察庁は4月に「サイバー警察局」と「サイバー特別捜査隊」を新設しましたが、地方警察の役割をどう考えますか。

 ◆県民の安全を守る役割は変わりません。警察庁での新部署設置は、国を挙げて捜査や被害防止、人材育成に強力に取り組む姿勢の表れだと思います。

 国境を容易に越えて行われる犯罪なので、特に国際捜査の推進に対する期待はあります。国の組織が強化されてやりやすくなることが増えると思うので、県警としても国際捜査を積極的に視野に入れ、全国をリードできるようにしたいです。

松尾直樹(まつお・なおき)さん

 1980年生まれ、高知県出身。東京大大学院修了後、2006年に技術系職員として警察庁に入庁。13年に埼玉県警に出向し、サイバー犯罪対策課調査官を務めた。15年に同庁警備局でサイバーテロ対策を担当し、翌年のG7伊勢志摩サミットの警備対策にも携わった。21年から現職。

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