「生き残りの椅子、どうすれば」 母になった若手研究者の苦悩

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長女を抱く理化学研究所基礎科学特別研究員の木邑真理子さん=本人提供
長女を抱く理化学研究所基礎科学特別研究員の木邑真理子さん=本人提供

 仕事と子育ての両立は女性の社会進出の大きな課題です。とくに女性研究者にとって、子育ては高いハードルになっています。任期付きポストに就くケースが多く、短期間で成果を出さなくてはならない一方、出産や育児で研究の中断を余儀なくされるためです。ある研究者を取材しました。

任期付き研究員、1年前に母に

 理化学研究所(埼玉県和光市)で研究員をしている、宇宙物理学者の木邑(きむら)真理子さん(29)。ちょうど1年前に母になった。

 木邑さんの専門は、ブラックホールの近くから放出されるエネルギーの観測だ。京都大の大学院生だった2016年、ブラックホールの規則的な光の「またたき」を可視光でとらえることに初めて成功し、世界で最も権威ある英科学誌「ネイチャー」に発表した。

 京都大で博士号を取り、理研の中でも特に将来が期待される若手向けの「基礎科学特別研究員」に就いた。過去には、脳科学者の茂木健一郎さんらも就任したポストだ。

 それでも、将来への不安は消えない。

 木邑さんは、京都大の学生時代に知り合った夫(31)と20年に結婚した。夫は石川県内の海をフィールドに海洋の研究をしており、その流れで15年に石川県庁の研究職員になった。「週末婚」の生活だった。21年6月に長女を出産し、約1年間、産休と育休を取った。

 「育休中は育児が仕事。周りが成果を出している中で研究から離れ、『この先大丈夫かな』と不安になりました」と振り返る。

職場復帰で再び「週末婚」に

 夫と長女は、今も金沢市に住んでいる。育休中の1年間は、木邑さんは金沢で家族一緒に暮らし、ひとときも長女から離れたことはなかった。

 だが22年5月に職場に復帰してからは、再び「週末婚」になった。仕事がある平日は東京都内の夫の実家から理研に通い、土日だけ新幹線で金沢に戻って長女の世話をする。

 平日は保育園に預けたり、1時間あたり700円で利用できる金沢市の子育てサービスを使ったりして、夫が長女の面倒をみている。

 長女が熱を出し、やむを得ず看病のため有給休暇を取って金沢に行くこともある。理研は、原則として遠隔地でのテレワークは認めておらず、すでに8日間も有給を消化したという。

 「夫の負担も大きいし、娘は私と会えないことにさみしさや不安を覚えるかもしれない。できたら両親は同じ場所にいた方がいい」との思いがある。

最後は「研究者を辞める」道も

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