節税セミナーで7600万円脱税の疑い コンサル会社役員ら5人逮捕

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東京地検が入る庁舎=金寿英撮影 拡大
東京地検が入る庁舎=金寿英撮影

 仮想通貨(暗号資産)取引の利益を申告せず所得税計約7600万円を脱税したとして、東京地検特捜部は21日、アラブ首長国連邦のドバイにあるコンサルタント会社「KPT General Trading LLC」の業務執行役員で日本支店代表、多和田真一容疑者(71)=東京都新宿区=ら5人を所得税法違反容疑で逮捕した。多和田容疑者は「タックスヘイブン(租税回避地)を使った節税」をうたって顧客を募り、脱税を指南した疑いがある。

 他に逮捕されたのは、弁理士の佐藤俊彦(63)=埼玉県川口市▽会社役員の森尻幸子(64)=群馬県みどり市▽無職の吉田毅(48)=東京都多摩市▽電話応接事務員の唐嶋亮太朗(48)=東京都板橋区=の4容疑者。逮捕容疑は、多和田、佐藤、吉田の3容疑者は共謀し、佐藤容疑者が仮想通貨取引で得た2017年と18年分の所得約1億1700万円を申告せず、所得税約4100万円を免れたとしている。また、多和田、森尻、唐嶋の3容疑者は共謀し、森尻容疑者が仮想通貨取引で得た18年分の所得約8900万円を申告せず、所得税約3500万円を免れたとしている。

 関係者によると、多和田容疑者らは「タックスヘイブンのドバイにあるKPT社が取引をすれば課税されない」などと宣伝する「節税セミナー」を開き、仮想通貨「ADA(エイダ)」の売却などを代行していた。佐藤、森尻両容疑者はセミナーの参加者で、多和田容疑者らは代行で得た利益の約1割を手数料として受け取っていたとされる。多和田容疑者は逮捕前の調べに容疑を否認していた。

 国税庁は、仮想通貨の売却益や、種類の違う仮想通貨同士を交換して得た利益は「雑所得」として申告するよう定めている。特捜部と国税当局は、多和田容疑者らがドバイではなく国内で取引していたと判断し、利益の大きい顧客に絞って立件した。

 多和田、吉田両容疑者は太陽光発電関連会社など2社の脱税を指南したとして法人税法違反容疑で1日に特捜部に逮捕されており、21日に起訴された。【松尾知典、二村祐士朗】

仮想通貨税率高く 背景に投資家不満か

 日本暗号資産取引業協会によると、国内の仮想通貨の取引総額は2016年度は約3兆5000億円だったが、20年度は約118兆円と30倍以上に膨れ上がった。一方で、仮想通貨の所得税率は株式よりも高く設定されており、投資家らの不満が事件の背景にあるとの見方もある。

 仮想通貨は証券会社などを介さずにインターネット上で取引でき「ビットコイン」など1万種類以上あるとみられる。今回の事件で課税対象とされた「ADA(エイダ)」は18年ごろに価値が高騰し、億単位の利益を得た「億り人」と呼ばれる投資家らが日本でも相次いだとされる。

 国税庁は17年、仮想通貨の課税ルールを初めて示し、取引で生じた利益は「雑所得」に当たり、税率は最大で55%とした。国民に広く取引してもらう意図で20%としている株式との差は大きい。日本暗号資産ビジネス協会は「仮想通貨は決済手段として利用する人も増えている。課税も株式などの金融商品と整合性を取るべきだ」とする。

 国税OBの坂本新税理士は「仮想通貨に関する税務調査が今後増える可能性がある。投資家らはルールを守って納税する必要がある」と指摘している。【島袋太輔、井口慎太郎】

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