フリマで売買、乱用も? 命に関わる「ヘルプマーク」 誕生10年

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オークションサイト「ヤフオク!」には、自治体が無償配布したとみられるヘルプマークが出品されている=2022年6月15日午後0時15分、同サイトより
オークションサイト「ヤフオク!」には、自治体が無償配布したとみられるヘルプマークが出品されている=2022年6月15日午後0時15分、同サイトより

 外見からは分かりにくい障害や病気などがあり、サポートや配慮が必要なことを周りに知らせるための「ヘルプマーク」。誕生から10年目となり、全国的に利用は進んだが、フリマサイトで売買されるなど、本来の意図とは異なる使い方をされるケースも出ている。普及団体の関係者は「本当に必要な人が助けを得られるよう、正しく使ってほしい」と訴える。【山本萌】

“見えない”障害や病気のある人が使用

 ヘルプマークは、人工関節を使ったり、心臓や呼吸器などの内部障害があったり、妊娠初期であったりといった、外見では分からなくても配慮や助けを求めている人のための印。赤地に白い十字とハートが共通デザインで、かばんや服に付けるためシリコーン製などのタグになっている。この他に、カードケースに入るサイズで紙やプラスチックで作られた「ヘルプカード」もあり、いずれも東京都福祉保健局が2012年秋に配布を始め、全国に広がっていった。

 配慮や支援が必要な人は誰でも使え、自治体の窓口以外に、都内では都営地下鉄や都営バスといった公共交通機関や都立病院の窓口などで、無料で受け取れる。原則1人1枚で、家族でも本人に代わって受け取ることが可能だ。都の担当者は「ヘルプマークは、障害者手帳のように取得するために障害や病気の判定があったり、対象となる障害などを決めたりせずに、できるだけ敷居を低くしています」として広く配布している。一方で、自治体によっては申請書の記入を求めている場合もある。都によると、21年10月時点で47都道府県全てにヘルプマークが普及し、ヘルプカードの配布などがされているという。

若い女性に声掛けする不審な男性

 ところが、ヘルプマークの普及に伴い、悪用や乱用の可能性も指摘されるようになってきた。例えば、今年5月24日夜、東京メトロ副都心線の新宿三丁目駅の改札を出た地下通路で、ヘルプマークを持つ不審な男性が目撃された。目撃したのは、動画投稿サイト「ユーチューブ」などで「モテ期プロデューサー荒野」として恋愛を指南しており、実業家でもある都内在住の荒野広治さん(36)。

 荒野さんに取材すると、男性は背負ったリュックにヘルプマークを二つ付けており、三つ目を顔の高さまで掲げるように見せながら、歩いている若い女性たちに「すみません」と次々と声を掛けていたという。荒野さんが「何かお手伝いしましょうか」と言うと、男性は後ずさって「大丈夫です」などと断ったという。荒野さんは「何度も目をぱちぱちさせていたので目が弱いのかもと考え、その後、少し見守っていましたが、数秒後には別の女性に声を掛けていました。ヘルプマークの掲げ方も(テレビ時代劇『水戸黄門』の)印籠(いんろう)のようでした」と振り返った。

 そのときは「訳が分からず、駅員に相談することなく帰宅した」が、ふと思い立ってこの話をツイッターに投稿したところ、「同じような人を見たことがある」という趣旨の返信が相次ぎ、今月18日現在で12・5万件の「いいね」が押され、リツイートは3万件に上った。コメントには「本当に困っている人も疑われてしまう」「何らかの処罰か、ヘルプマークをもらう際に署名なつ印などを必要にするべき」といった意見もあった。

 荒野さんは「男性には声を掛けず、若い女性だけ十数人に声を掛けていました。ナンパや痴漢目的だったのかもしれません」と話す。男性を目撃した場所は、柱が多く駅員の目に付きにくい場所だった。東京メトロ広報部は取材に「迷惑行為の事実は確認されていない」と答えながら、「駅構内の巡回・警備を実施しており、お客様から駅構内で迷惑行為などの被害の申し出をいただいた場合は、警察の捜査に協力します」とした。

 都は「誤った使い方をしている方がいるならば残念です」と話し、その上で「ヘルプマークを使う人は、本当に助けてほしい人が大多数だと思います。身に着けづらくなってしまわないよう、持っている人に対して(誤った目的なのではという偏見を持たずに)手助けをお願いしたいです」と呼びかける。

複数のヘルプマーク、どう入手? 「可愛い」と売買も

 「フリマサイトなどで稼ぐ手段としても乱用されている」と指摘するのは、ヘルプマークの普及啓発を行う「ユニバーサルヘルプカード協会」の代表理事、渋谷みち代さん(59)だ。自身も難病の「肺動脈性肺高血圧症」を抱えている。…

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