「テレビ嫌い」 好感度↑TBS井上貴博アナ、「とんがり」の真意

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
インタビューに答えるTBSの井上貴博アナウンサー=東京都港区で2022年6月1日、幾島健太郎撮影 拡大
インタビューに答えるTBSの井上貴博アナウンサー=東京都港区で2022年6月1日、幾島健太郎撮影

 かなり、とんがっている。「そこまで言って大丈夫?」とこちらがハラハラしてしまう。TBSの井上貴博アナウンサー(37)。報道・情報番組「Nスタ」(月~金、午後3時49分)でおなじみで、昨年末には「好きな男性アナウンサーランキング」でトップテンに初ランクイン。今春、初の自著を出版し、さらに橋田賞にも輝くなど、赤マル急上昇的な存在だ。その彼が、ラジオで「テレビが嫌い」と公言した。アナウンサーらしからぬ“やんちゃ”ぶりだが、その真意はどこにあるのだろうか。【稲垣衆史】

局アナなめんじゃねえ

「Nスタ」に出演している井上貴博アナウンサー(左)とホラン千秋さん=TBS提供 拡大
「Nスタ」に出演している井上貴博アナウンサー(左)とホラン千秋さん=TBS提供

 インタビューが始まったのは「Nスタ」終了後。ノーネクタイで黒縁メガネ姿というラフないでたちで現れた。3時間も番組を仕切ってきた疲れは見せず、さわやかだ。

 記者(稲垣)が井上アナと会うのは、今年3月以来。自身初となるラジオの冠番組「井上貴博 土曜日の『あ』」(午後1時)のスタート直前だった。番組の初回、彼はこう言い放ったのだ。

 「もともと私はテレビがあまり好きじゃなくて、だから『テレビを変えたい』『局アナなめんじゃねえ』っていう思いが強くて。フリーの方、タレントさんは退路を断って、いつ首を切られるかわからない。局アナも同じ土俵で戦うべきじゃないか」

 アナウンサーといえば、ソツなくニュースを読み上げたり、番組をうまく取り仕切ったりするイメージが大きい。冠番組とはいえ、そこまでぶっちゃけていいの?

 「社内では『お前はそういうキャラだね』って感じで通ってますから。今は(視聴者にも)アンチが増えるのを覚悟してますし、どこか楽しんでいる部分もあります」

 「テレビ嫌い」はテレビ自体が嫌いなのではなく、現状に対してモノ申したい、という意味らしい。例えば、CMに入る直前に「この後、あの有名女優が登場!」など、視聴者の関心を引こうとする「つり広告」のようなテロップが出される。Nスタではこのような手法を取らないというが、業界を見渡せばまだみられる。「視聴者の価値観が多様化しているのにテレビは古い体質のままです」

タレントと面白さで勝負

報道・情報番組「Nスタ」の収録に臨むTBSの井上貴博アナウンサー(右)=東京都港区で2022年6月1日、幾島健太郎撮影 拡大
報道・情報番組「Nスタ」の収録に臨むTBSの井上貴博アナウンサー(右)=東京都港区で2022年6月1日、幾島健太郎撮影

 「問題」はもうひとつある。

 情報番組やバラエティーを見ると、メインのMC(司会者)にはフリーやお笑い芸人が起用され、局アナはアシスタント、というケースが目につく。この現状に井上アナは「悔しさ」を感じている。「アナウンサーはしゃべりのプロ。ならばもっと張り合って、メインをとらなくては。タレントとは違う『面白さ』を追求して勝負するべきだと思うんです」

 こう考える背景には、苦い経験がある。

 2013年、情報番組「朝ズバッ!」の総合司会に起用された。みのもんたさんの後任だった。

 「局アナで視聴率を取る」とがむしゃらに走ったが、番組は半年で終了。次に待っていたのは、フリーのアナウンサーがMCを務める番組のアシスタント役だった。ショックは大きかったが、「MCを取る」「司会者として極める」という目標が明確になった。その後、17年に「Nスタ」のメインに抜てきされた。

コロナ禍が、変えた

 自分の考えを番組内ではっきりと示すスタイルになった転機は、新型コロナウイルス禍だった。それまでは比較的「旧来型」に近いアナウンス姿勢だったという。SNS(ネット交流サービス)上での中傷コメントが以前と比べて格段に増えた。「命を軽視するアナウンサーをやめさせろ」「偽善者」――。長引くコロナ禍で世間のストレスが高まっているのかもしれないが、人格を否定されるような中傷に、心が折れそうになった。だが自分の中に「みんなに好かれたい」思いがあると気づき、割り切れるようになった。「嫌われない人間を目指してもつまらない」

 昨年末、オリコンが主催する「好きな男性アナウンサーランキング」で初めて9位に入った。「好感度」について、5月に刊行した著書「伝わるチカラ」(ダイヤモンド社)でも、こう述べている。

 <好感度への野心も衰えたところで、ランクイン。好感度を気にせず発言する自分に好感を持ってくれたことが、うれしいですね>

 世間におもねらず、自身のスタイルを続けたことが好感度アップにつながったというのだ。事実、投票した人からは「マスコミ寄りではない、一般の市民が思うであろうことを代弁してくれる」とのコメントが出ていた。

 「司会者として『果てしなく上』」を目指している。だがその具体像はまだ描けていない。ただ「常に何かを裏切っていたい」という思いが強い。「自分に『報道の人』という色が付いているなら、その色にないことをやりたい。5年後も同じことをしていたらダメ。今日はこういう考えだけど、明日変わっていてもいい。変わらないと成長できないでしょう?」

 最後までとんがったままだった。もちろん、いい意味で。

いのうえ・たかひろ

 1984年8月生まれ。東京都出身。慶応大卒。2007年入社。「はなまるマーケット」など主に情報・報道番組を担当。高校時代は野球部に所属し、大学でも高校野球部のコーチを務めた。

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集