「不真面目がイノベにつながる」 スピーチ・ジャマー誕生の秘密
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「スピーチ・ジャマー」を発明し、ユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」に輝いた若手研究者を覚えているだろうか。あれから10年。発案者の栗原一貴さん(44)は津田塾大学学芸学部情報科学科の教授となり、教え子は、がに股を楽しく矯正する「ガニマタバイバイ」を誕生させた。モノづくりや研究には「不真面目さ」が欠かせないという。【聞き手・深津誠】
言葉の無作法への自衛手段
――迷惑なおしゃべりを邪魔して、抑え込むことができる装置「スピーチ・ジャマー」を生み出した経緯は?
◆私は1対1の対話などは苦ではないのですが、周囲に構わずしゃべり続ける独演会のような場面が苦手です。それは言葉の無作法だと感じるからです。自分が納得できる形で自衛できる手段も考えたかったんです。
元々はプレゼンテーション能力をアップさせる装置を目指していました。人がプレゼンする様子を動画で撮影し、話すスピードや顔の向き、抑揚などを解析する機械の開発を進めていました。そんなとき、お台場の日本科学未来館(東京都江東区)を訪れました。錯覚など人体の不思議を楽しむコーナーで、マイクとヘッドホンを着けて、話をする自分の声を少し遅れて聞くと、話しづらくなる現象を体験する展示が目に留まりました。
そこで、この仕組みを開発中の装置に応用すれば、「ずっとしゃべり続ける人を黙らせることができる」と思いついたのです。
こうして生まれたスピーチ・ジャマーは、話している人の声をマイクで集め、0・2秒遅れでスピーカーで、その人の耳に届くようにしました。話している人は脳が混乱し「うまく話せていない」と思うのです。真面目な研究として始まったものが、その過程で出てきた枝葉の部分で評価された格好です。名前は日本語の「邪魔」と、英語で妨害などを意味する「Jam(ジャム)」を掛けました。
人類の存続に不真面目さは有利
――幼い頃から研究者を目指したのですか。
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