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吃音(きつおん)(どもること)は日本では人口の約1%が持つとされ、学びの場でも、いじめやからかいに遭ったり、孤立したりして、悩むケースは多い。九州大学医学部助教で、医師の菊池良和さん(44)も幼いころから自身の吃音に悩んできた一人だ。周囲の望ましい配慮の在り方や、「吃音ドクター」として活躍できるまでになった理由に迫った。【遠藤大志】
菊池さんは、九州大病院(福岡市東区)耳鼻咽喉(いんこう)・頭頸(とうけい)部外科で、「吃音外来」を担当している。国内でも数少ない吃音の専門医で、そのメカニズムについての研究も続けている。吃音当事者である記者が、自身の経験も踏まえて、さまざまな疑問をぶつけてみた。
学校では6割がいじめ、からかいに
――吃音は、対処の仕方などを巡ってさまざまな考えがあり、振り回されることは少なくありません。そもそも治りますか?
◆広く言われているのは、治りにくいということです。2~4歳くらいに発症するケースが多く、男性は約6割、女性では約8割が自然に治るといわれます。ただ、海外の研究では8歳ごろまでに吃音が残っていると、生涯にわたり症状が続く可能性があるともされます。一方、話しやすいタイミングを独自に習得することなどで、他人には分からないくらいまで改善させたケースも多くあります。
――学校現場で、吃音の子どもたちが直面する困難な事例も多いです。
◆吃音を持つ子どもの約6割が学校でいじめやからかいを受けた経験があるとされています。また、避けることのできない発表や音読、日直での号令などは強いストレスになるでしょう。吃音者は、対人関係に強い恐怖を感じる「社交不安障害」を患っている割合も高く、中学校や高校に上がるタイミングで不登校になるケースも多く確認されています。
ただ、本人の悩みの度合いが症状の重さと単純比例するわけではありません。どもっていても話すことを苦にしないタイプの子どももいれば、症状が軽く周囲に気づかれなくても深刻に悩んでいる子どももいるのです。
どもっていても、話し終えるまで聞く
――学校現場では、どういう配慮が望ましいのでしょうか?
◆基本的には、どもっていても話し終えるまで待つことです。…
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