ランナーたちの頭痛の種…マラソン復活も「参加料」続々値上げ

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通常開催だった2019年の東京マラソン。東京駅前のフィニッシュ地点は、多くのランナーであふれていた=東京都千代田区で2019年3月3日午後1時9分、宮武祐希撮影 拡大
通常開催だった2019年の東京マラソン。東京駅前のフィニッシュ地点は、多くのランナーであふれていた=東京都千代田区で2019年3月3日午後1時9分、宮武祐希撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大で中止になっていた市民マラソンが続々と復活しつつある。東京マラソンは今年3月、人数を減らした上で、3年ぶりに市民ランナーも参加して開かれたが、来春の次回大会はコロナ前の規模に戻して実施することが決まった。東京に触発され、各地の大会の主催者も今秋以降の開催を相次いで発表している。そうした中、ランナーたちの頭を悩ませるのが、コロナ禍で拍車がかかる参加料の値上げ問題だ。

 「東京マラソンは全国のマラソン大会関係者にとってシンボリックな存在。参加人数も警備など大会に関わる人の数も多い。『東京でできるのならばうちも』という声は多い」。マラソン雑誌「月刊ランナーズ」の黒崎悠編集長(37)はこう語る。

 同誌を発行するアールビーズ(東京)が運営する市民ランナー向けのポータルサイト「ランネット」は、年間2000近い大会のエントリーを受け付けているが、黒崎編集長によると感染拡大後、一時は大半が中止に追い込まれた。東京マラソンも2020年はエリート選手のみで開かれ、21年は同年中の開催を断念。しかし、昨秋以降、金沢マラソンや富山マラソンなど一部の大会が予定通り実施され、今年3月、まん延防止等重点措置期間中に、延期されていた東京マラソンが一般ランナーも参加して開かれたことで、追随する動きが一気に広がった。

 これまでに▽横浜=10月30日▽ちばアクアライン=11月6日▽松本、福岡=11月13日▽神戸=11月20日▽北九州=23年2月19日――などの開催が決まった。予定通り開かれれば、前回が18年だった、ちばアクアラインマラソン以外は3年ぶりとなる。今後の感染状況次第では中止もあり得るものの、ワクチン接種が進み、他の大規模イベントも相次ぎ再開していることなどから、関係者の間では「次は予定通り実施できるのでは」という期待が大きい。

今秋から来春の開催が決まった主な市民マラソン大会 拡大
今秋から来春の開催が決まった主な市民マラソン大会

 23日には東京マラソン財団が次回大会を来年3月5日に開催すると発表。今年3月の大会の参加定員は、コロナ禍前の19年の3万8000人(10キロ走の500人を含む)より1万3000人少ない2万5000人(同300人を含む)に絞っていたが、次回は3万8000人(同500人を含む)に戻すことにした。東京の決定は今後、他の大会にも影響しそうだ。

 一方、ランナーたちの頭痛の種が、相次ぐ参加料の値上げだ。元々、コロナ禍前からマラソン大会の参加料は上昇傾向にあった。最大の理由が警備費用の高騰だ。東京マラソン財団によると、13年4月の米ボストンマラソンで起きた爆弾テロ事件などをきっかけに警備を強化。18年大会は13年に比べ警備員を約2400人増やすなどした結果、警備・安全対策費が約2・7倍の約4億8000万円に膨れ上がった。警備・安全対策費を含め、18年大会の開催や運営にかかった費用は参加者1人当たり5万4800円に上る。

 このため、財団は1万800円に据え置いてきた参加料を、20年大会(結果的に一般ランナーは参加できず)から1万6200円に値上げ。今年3月の大会は参加料1万6500円にPCR検査代6800円が加わった。次回大会は参加料が2万3300円まで上がるが、PCR検査費用が最初から盛り込まれており、実質的には今年と同じだ。

 警備やコロナ対策が重くのしかかるのは他の大会も同じだ。19年に1万5000円だった横浜マラソンの次回参加料は2万円。担当者は「警備費用だけでなく、健康チェックアプリの開発や当日の検温、消毒などのコロナ対策にも費用がかかる」と説明。19年の1万2800円から次回は1万6400円に上がる福岡マラソンの担当者も「昨今の人件費や物価上昇にコロナ対策も加わり、上げざるを得ない」と理解を求める。

 ただ、ランナーからは「これ以上高くなると参加するかどうか考え直すかもしれない」(福岡マラソンにエントリーした福岡市の理容師の男性)といった声も漏れる。そうした中、1万9700円への値上げ方針を決めていた神戸マラソンは「申込数に影響しかねない」(実行委)として、海外のトップランナーの招請を見送るなど運営費用を見直し、次回の参加料を1万6200円(19年は1万1200円)に抑えた。主催者側もこれ以上の値上げは避けたいのが本音だ。

今春の東京マラソンで都庁前を一斉にスタートするランナーたち=東京都新宿区で2022年3月6日午前(代表撮影) 拡大
今春の東京マラソンで都庁前を一斉にスタートするランナーたち=東京都新宿区で2022年3月6日午前(代表撮影)

 依然感染が収束しない中、市民ランナーがどれくらい大会に戻ってくるのかにも関係者は神経をとがらせる。実際、コロナ前に応募倍率が2~3倍あった横浜マラソンの次回倍率は1・14倍。ちばアクアラインマラソンも18年の1・7倍から1・4倍に下がり、担当者は「しばらく走っていないことによる体力の心配や、感染状況への不安があるのでは」と語る。

 黒崎編集長は「ランナーの間には『また中止になるかもしれない』という不安があり、フルマラソンのためのハードな練習をすることへの心理的なハードルがあるようだ」と指摘。その上で「先行して開催された大会の運営ノウハウは全国の大会関係者が共有している。マラソンで感染が広がったという事実もなく、安心してエントリーしてほしい」と呼びかける。

 ちなみにコロナ前、倍率が10倍を超え、出場権が「プラチナチケット」とも言われた市民ランナー憧れの東京マラソンの倍率はどうなりそうか。黒崎編集長は「10倍に近い数字になるのでは」と予測する。【井上俊樹】

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