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指先のエロス

全盲の落語家・桂福点さんが、魅惑の世界を「指先」案内します。

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指先のエロス

時空の壁を超えて 胸に迫る生死の手触り=桂福点

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イラスト・まどさん
イラスト・まどさん

 机に置かれた点字用紙の束。指先で読んでみると、全体に摩耗している。長い時間が、文字の上を流れていったためだろうか。

 京都の盲学校に保管されている古い「点字毎日」新聞だ。紙面の日付は1945年6月28日。ページをめくると「沖縄戦」という言葉があった。牛島満司令官が、同月23日に沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)で自決する前日までの緊迫した状況が記述されている。

 かつてこの国で一億玉砕の旗の下、障がいがある者もない者も戦争の渦に巻き込まれ、翻弄(ほんろう)された時代のことを伝えている。点字をなぞると、77年という時間の壁を超えて、戦禍を生きた視覚障がい者の手に自分の手を重ねているような気持ちになった。

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