対馬の仏像盗難、返還は? 日韓関係の改善進める尹政権も板挟み

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取材に応じる観音寺の田中節竜住職=韓国中部・大田で2022年6月15日、渋江千春撮影
取材に応じる観音寺の田中節竜住職=韓国中部・大田で2022年6月15日、渋江千春撮影

 2012年10月に長崎県対馬市の観音寺から盗まれ、韓国へと持ち込まれた長崎県指定文化財「観世音菩薩坐像(ぼさつざぞう)」の所有権を巡る裁判が韓国で長期化している。1審ではかつて像があった韓国の寺に所有権を認める判決が出て、仏像を保管する韓国政府が控訴。2審が長引く中で、直接の訴訟当事者ではない観音寺住職が6月、韓国の法廷に出向き、日本への早期返還を求める異例の事態に発展した。元慰安婦や元徴用工訴訟に引き続き、韓国の司法判断が日韓関係の足を引っ張ることになるのか――。事件と訴訟の経緯を追った。【ソウル渋江千春】

日本の住職、異例の渡韓

 訴訟は、韓国中部・瑞山(ソサン)にある浮石寺(プソクサ)が16年4月、韓国政府を相手に引き渡しを求めて起こした。仏像内にあった文書に、1330年を示す高麗時代の年号や、「高麗国瑞州浮石寺」との記載があり、もともとは浮石寺の所有だった可能性が浮上したためだ。

 裁判の当事者はあくまで、仏像の所有権を主張する浮石寺と、仏像を保管する韓国政府。観音寺は当初、関与せずに見守ったが、1審で裁判所が浮石寺の所有権を認めたため、控訴審では、利害関係がある「補助参加人」としてあえて参加することで、観音寺に所有権があると直接、法廷で訴える方針に転換した。

 「すでに10年という月日が流れている。一日も早く、我々の手元に戻ってくることを強く望んでいる」。観音寺の田中節竜住職(46)は今月15日、大田高裁で開かれた控訴審に出席し、仏像の早期返還を切々と訴えた。

 控訴審には、田中氏の傍らに、数人の在韓日本大使館員が付き添った。裁判の結果次第では、「1965年の国交正常化以来、最悪」とも言われる日韓関係のさらなる火種になりかねないと警戒していることがうかがえた。

 田…

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