G7、対ロシア制裁に手詰まり感 中露は新興国との連携拡大に躍起
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ドイツ南部エルマウで開催されていた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は28日、ウクライナに侵攻するロシアへの経済制裁を強化し、民主主義国が結束して立ち向かうことを確認して、閉幕した。これまで制裁の効果は狙い通りに上がっているとは言えず、逆に制裁がもたらす物価上昇が世界的に懸念される状況で、手詰まり感は強まっている。一方、中露は反発して、途上国との連携を深めようとしている。
G7「専制主義」への対抗、歩み遅く
ロシアへの経済制裁強化の議論は米国主導で進められた。新たに打ち出された金の禁輸や原油価格に上限を設定する案などは、米政府が記者団に説明する形で表明した。米政府高官は「バイデン政権がいかに民主主義国家の力を結集して、共通の課題に対処できるかを示した」と胸を張った。
米国の狙いは、G7を巻き込む形で「民主主義国家VS専制主義国家」の構図を明確にすることだ。昨年、英国で開かれたG7サミットと同様の構図を描き、国際的な規範を無視してウクライナに侵攻したロシアを対立構図の中に位置づけた。米政府がサミット開幕に合わせて公表した資料では、対露制裁には30カ国以上が参加し、ロシアの輸入は約4割減少、国内総生産(GDP)も大幅に落ち込む見通しと制裁効果をアピールする。
だが戦況は手詰まりの状態が続き、制裁がロシアの戦費の調達などにどの程度の効果を及ぼしているかは明確でない。むしろ、米英や欧州連合(EU)が導入した露産原油の禁輸や、欧州が進める露産天然ガスへの依存脱却は、エネルギー価格を押し上げ、原油や天然ガスなどの資源輸出国のロシアにとってプラスに働いているとみられる。プーチン露大統領は17日、北西部サンクトペテルブルクで開かれた会合で「経済制裁は成功しなかった」と述べている。
一方、制裁がもたらした物価上昇は、世界経済にさまざまな経路で悪影響を及ぼしている。ドイツを含めた欧州の一部の国はエネルギー価格の高騰から、気候変動対策に逆行する石炭火力発電の拡大を検討している。ロシアの主要銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)の対象から排除された制裁の影響でロシア産肥料の決済が滞り、世界的に肥料価格が高騰するなど想定外の現象も起きている。
途上国は制裁が穀物価格の高騰や食料危機につながっていることに不満を強めている。アフリカ連合(AU)によると、金融機関への制裁の影響で決済に支障が生じ、食料の輸入が滞っているという。
岸田文雄首相は27日、サミットで「世界の食料危機はG7の制裁が原因だというプーチン大統領の主張は全くの偽りだ」と強調し、…
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