「女性棋士」誕生なるか レベル向上で制度も変化

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里見香奈女流王座=大阪市福島区の関西将棋会館で2022年5月27日、新土居仁昌撮影 拡大
里見香奈女流王座=大阪市福島区の関西将棋会館で2022年5月27日、新土居仁昌撮影

 将棋の女流棋士、里見香奈女流王座(30)が、女性で初めてプロ編入試験の受験資格を獲得した。「棋士」と「女流棋士」は全く別の制度で、女性の棋士はまだ生まれていない。里見女流王座が受験を決めて初の「女性棋士」に挑むかどうか注目されている。【学芸部・丸山進】

なぜ男性が強いのか

 女流棋士制度は、女性に将棋を広めるためには女性プロが必要だとして、1974年に作られた。

 棋士になるにはプロ養成機関の奨励会で四段になることが条件だ。一方、女流棋士は奨励会の下部組織「研修会」で一定のクラスに上がることが条件で、棋士になる方がはるかに難しい。公式戦での対戦で女流棋士は、棋士との勝率が2割弱と分が悪い。

 体力の関係ない頭脳ゲームで、なぜ男女の実力差があるのか。最大の要因は、競技人口が多いスポーツほどスター選手が出やすいのと同じように、女性の将棋人口が男性より圧倒的に少ないことが挙げられる。将棋が激しく戦うゲームで、男性の方が熱中しやすいのが影響しているともいわれる。

AIの導入で上達が早く

将棋の現役最年少女流棋士の鎌田美礼さん=千葉県柏市で2022年5月15日、宮間俊樹撮影 拡大
将棋の現役最年少女流棋士の鎌田美礼さん=千葉県柏市で2022年5月15日、宮間俊樹撮影

 ただ最近は、ネット将棋やAI(人工知能)で強い相手と対局できる機会が増え、女性の上達スピードは上がっている。5月には現役最年少で鎌田美礼さん(13)、6月には17日違いで現役最年少となった木村朱里さん(13)が女流棋士の仲間入りを果たした。いずれも中学2年生だ。

 奨励会から棋士を目指す女性もいる。里見女流王座はプロ入り(四段)直前の三段に到達した第1号。第2号の西山朋佳女王(26)は2020年、上位2人が四段になれる「三段リーグ」で3位となり、あと一歩で逃したが、「女性棋士」が夢物語ではないと証明した。

 女性のレベル向上に合わせ、制度も変わった。研修会から女流棋士になる基準が引き上げられ、プロ編入試験制度ができ、棋士と女流棋士の兼務も可能になった。今も三段の女性が戦っており、いつ誕生してもおかしくない「女性棋士」に向け、環境は整っている。

奨励会

 日本将棋連盟がプロ棋士を養成するために設けた機関。プロ棋士からの推薦を受けるか、アマチュアの全国大会で規定の成績を収めると、入会試験を受けられる。6級から三段までで構成され、プロ棋士とされる四段への昇段をめざして会員同士で対局する。二段までは、関東と関西に分かれ、三段に昇段すると、半年にわたって18局戦う三段リーグに参加できる。ここで上位2位に入ると四段への昇段が認められ、正式なプロ棋士になる。しかし、原則として26歳までしか在籍できない年齢制限がある。

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