「生食できるサバ」販売急増中 新たな養殖法に意外な企業も参入

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陸上養殖で育てられた「お嬢サバ」=JR西日本イノベーションズ提供
陸上養殖で育てられた「お嬢サバ」=JR西日本イノベーションズ提供

 寄生虫が潜んでいる恐れがあり、調理時に加熱などが推奨されているサバ。ところが特別な育て方によって「生で安心してお召し上がりいただけます」と銘打つ商品があり、売り上げが急増している。この育て方は地域の活性化を促し、世界的に旺盛な水産物需要を賄う方策の一つにもなるという。一体どのような育て方なのか。

 JR京都駅の構内に5月、すしなどを販売する店舗が登場した。目玉商品はサバの握り(1300円)。写真入りの商品説明には「生ならではの濃厚で甘い脂乗り」と記されている。サバやヒラメ、サーモンなどを彩り良く並べた押しずし(1000円と1500円)もあり、立ち寄った利用客は物珍しそうに眺めていた。

 この店舗で使うサバは「陸上養殖」と呼ばれる方法で育った。一般的な魚の養殖は、海面に網で囲まれた「いけす」を設置して、その中で育てる。これに対して陸上養殖は陸地に養殖施設を造り、ろ過した海水や真水に塩を加えた人工海水を入れた水槽で育てる。

 サバの生食が避けられているのは、海水にすむアニサキスといった寄生虫が食物連鎖を経て魚の体内に入り、それを人間が食べると食中毒になる恐れがあるからだ。対策として厚生労働省は調理時に60度で1分間の加熱か、マイナス20度で24時間以上の冷凍を推奨する。天然物や海面養殖とは違って陸上養殖は海水をそのまま使わないため、寄生虫が混入する可能性はほとんどないとされている。

 こうした利点に目を付けたのは、意外にも鉄道を本業とするJR西日本だった。鳥取県岩美町の網代漁港の敷地に整備した養殖施設で、井戸で地下10メートルから塩分を含む水をくみ上げて水槽に入れ、サバの稚魚を育てている。

箱入り娘にちなみ「お嬢サバ」と命名

 こうして育ったサバをJR西日本は「お嬢サバ」との商品名で販売している。虫が付かないように大切に育てた“箱入り娘”という意味を込めた。刺し身やカルパッチョのような生食も楽しめる。青魚特有の臭みも少なく、白子や肝も食べられることから人気が高まっている。2017年に養殖を始めた岩美町の施設に加えて鳥取県内にもう1カ所設け、更に愛知県内でも始めている。

 サバ以外の魚介類にも対象を広げ、現在はトラフグやサーモンなど8種類に及ぶ。このうちカキは、広島県大崎上島町の塩田跡地の地下からくみ上げた水で養殖しており、ノロウイルスの影響を受けにくい。海を一度も知らずに大切に育てられた世間知らずの“坊ちゃん”にちなみ、商品名は「オイスターぼんぼん」とした。

 JR西日本が陸上養殖した魚介類の販路は、大阪や東京などの飲食店やすしチェーン、スーパーなどに広がっている。京都駅の店舗もその一つだ。新型コロナウイルス禍で消費者が食べ物にも安心安全を求める傾向が強まったこともあり、21年度の売上高は非公表だが、前年度の4~5倍に急増したという。

 そもそも、なぜ鉄道会社のJR西日…

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