
若い世代が今、重視するのが「コストパフォーマンス」(費用対効果)や「タイムパフォーマンス」(時間効率)の考え方だという。映画やドラマを「倍速視聴」などの早送りで見るスタイルが広がっているのもその一例だ。なぜ効率を求めるのか。現代社会を生きる若者たちが志向する「コスパ」「タイパ」について考えた。
効率を大人があおり過ぎ 森永真弓・博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所上席研究員
映画やドラマの倍速視聴が生まれた背景には複数の要因がある。これまでも書籍の速読や読み飛ばしをする人はいたし、ミステリー小説の結末を見てから読む人もいた。人の欲望は変わっておらず、技術やサービスが進化して、映像でも同じようなことができるようになった。適応能力が比較的高い若い世代からこの習慣が始まり、娘や息子らから教わる形で現在は中高年にも広がりつつある。
一方で、今の若者特有の特徴もある。作品を楽しむだけでなく、鑑賞後に仲間と語り合うために映画を見る若者も多い。学校や地元、バイト仲間などとSNS(ネット交流サービス)上で24時間つながっている。争うのは嫌なので、意見が分かれるような社会的な問題は話題にしづらい。コミュニティー平和維持の生存戦略として映画やアニメなどのコンテンツは話題にしやすく、結果的に見なくてはいけない作品が増えていく。
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