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渡邊十絲子・評 『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』=川原繁人・著

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 (朝日出版社・1925円)

発見と進化 繊細に韻を踏む日本語ラップ

 幼児の言葉はかわいらしいものだ。舌足らずなところも言い間違いも愛くるしい。この本に出てくる例では、手塚治虫の名作『ブラック・ジャック』に登場するピノコがそういう言葉づかいをする。「そやア(そりゃあ)ピノコのかやだ(からだ)は先生がつくったんら(だ)もんね」。ピノコの存在はもちろんフィクションだが、この言葉づかいは子どもとして不自然ではない。子育て中の人なら「うちの子もこう言う」という部分もあるだろうと思う。

 しかしピノコの言葉は、身体的に未発達だから言いやすい音に変化しているわけではない。ダ行はラ行になり(「だもんね」が「らもんね」)、ラ行はヤ行になる(「からだ」が「かやだ」)が、ダ行がラ行を経由してすべてヤ行になるかといえば、そうはなっていない。つまりピノコは、未熟なせいできちんと発音できないのではなく、彼女なりの法則に従って発音をしているのだ。この本は、こうした謎を言語学の一分野である音声学の手…

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