- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

社会運動の一場面で久しぶりに強いキーワードを耳にした。「対立」。東京都渋谷区のホールで5月14日に開かれたイベントだった。タイトルも「ジェネレーション・レフト宣言~資本主義と闘う私たちの社会運動」と刺激的だ。
「お願いだけでは変わりません」
登壇した名古屋大大学院生のヒル・ダリア・エイミーさん(23)は気候変動問題に取り組んでいる。「社会運動の中で対立点を作ることが重要です。お願いだけでは変わりません」。客席を真っすぐ見詰めながら訴える。彼女の目に強い意志を感じた。
「対立」「闘う」「徹底追及」といった言葉は、1960年代から70年代にかけて盛んだった学生運動でよく使われた。権力を批判した過激な運動は、仲間同士の内ゲバ(内部対立)や、爆弾事件を起こした。当然、市民社会から見放され、勢いを失った。その記憶もあるのか、社会運動は対話や説得、理解と広がりが重視され、「対立」「徹底追及」といったやり方は敬遠されていった。
世界的には、30代前後の「ミレニアル世代」や、90年代半ばから2000年代に生まれた「Z世代」の若者たちが左傾化する動きが目立っている。彼らは「ジェネレーション・レフト(左翼世代)」と言われ、政治に影響力を発揮する固まりとして認識されつつある。
実際に「ジェネレーション・レフト」は左派政治家を熱烈に支持する傾向が強い。米国では民主党急進左派のバーニー・サンダース氏、英国では元労働党党首のジェレミー・コービン氏、フランスでは左翼党のジャンリュック・メランション氏――といった政治家の支持層の一つになっているのだ。
政治運動にとどまらない。気候変動問題、労働問題、開発問題などでも「ジェネレーション・レフト」は行動している。「海外の動き」という認識だったが、日本でも胎動を感じさせる若者たちがいることに気が付いた。ただ、その裾野は広がっているのだろうか。
ヒルさんは6月5日、名古屋市からオンラインで若者7人と意見を交わした。この日は気候変動問題に取り組む「Fridays For Future Japan」(FFFJ、フライデーズ・フォー・フューチャー、未来のための金曜日の日本団体)のメンバー有志による学習会で、テーマは「日本の植民地支配」。ヒルさんは話す。「気候変動の原因を考える上で、先進国による途上国の植民地支配を学ぶことは、問題をより深く理解するために欠かせません」。通信技術の発達で移動しなくても集まれ、海外の団体との連携もハードルが低くなったことは「ジェネレーション・レフト」の行動を支えている。
差別体験をエネルギーに
後日、名古屋でヒルさんと会った。社会運動に取り組むことになった動機や、過激とも受け取れる発言の背景を尋ね…
この記事は有料記事です。
残り4184文字(全文5317文字)