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あまり知られていない観光スポットや地元で人気の食べ物を、現地で勤務する支局長が紹介。47都道府県を巡ります。

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わたしの穴場 広島県 「水上タクシーで巡る広島市」 平和を映す6本の川 児童文学作家・中澤晶子さん

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京橋川の両岸は緑地帯。その先に見えるのは広島駅周辺の高層ビル群=広島市南区で5月 拡大
京橋川の両岸は緑地帯。その先に見えるのは広島駅周辺の高層ビル群=広島市南区で5月

 広島市は川のまちだ。市街地を縫うように6本の川が流れ、川べりの緑地が景観美を演出し、そこかしこに刻まれた歴史の跡と平和のメッセージがまちを彩る。地元在住の児童文学作家、中澤晶子さん(69)と水上タクシーで巡った。

京橋川右岸の古い河岸に生える木々。中央のシダレヤナギは作家・原民喜ゆかりの被爆樹木=広島市中区で5月 拡大
京橋川右岸の古い河岸に生える木々。中央のシダレヤナギは作家・原民喜ゆかりの被爆樹木=広島市中区で5月

 平和記念公園にある世界遺産・原爆ドームの対岸から、NPO法人「雁木(がんぎ)組」が運航する小型ボートで出発した。雁木とは階段状の護岸。海に近く最大約4メートルの干満差がある広島では数多く築かれ、船の発着にも使える。かつて「広島県産業奨励館」という名称だったドームの前にも雁木があり、見上げればリバーフロントを意識した設計だったと分かる。

原爆ドームの対岸から出航する「雁木タクシー」=広島市中区で5月 拡大
原爆ドームの対岸から出航する「雁木タクシー」=広島市中区で5月

 原爆投下目標だったT字形の相生橋をくぐると、右手は森のような広島市中央公園。半世紀以上前、川岸に原爆スラムと呼ばれた家屋がひしめき、中澤さんは「火事もよくありましたねえ」と記憶する。公園の一角では新しいサッカースタジアムが建設中で、クレーンが幾本も突き出ていた。

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 上流に向かい、本川と京橋川が分かれる付近は川幅が200メートルほど。「さえぎるものがないから空が広いですね」。中州の樹上にアオサギの巣が幾つも見えた。京橋川を下ると両岸にヨシ群落など自然が多く残り、その先には広島駅周辺の高層ビル群がそびえる。「ビルが見えなければ都会と思えない光景です」。南下して右手の深い緑は広島藩主・浅野家が築いた庭園「縮景園(しゅっけいえん)」。原爆投下直後、炎を逃れてきた大勢がここで息絶えた。川の近くに慰霊碑がひっそりと建つ。

 周辺は明治以後に造られた雁木が多く、終着点の京橋は1927年完成で市内最古の鋼橋。たもとの雁木を上ると、シダレヤナギが川にせりだしていた。被爆した作家・原民喜の持ち家にあった木で、説明板には平和の希求を緑に託した詩「永遠(とわ)のみどり」を記している。修学旅行生を20年以上案内する中澤さんは「豊かな水と緑はそれを守る人のいとなみがあってこそ。戦争のない平和のまちの象徴です」と語った。【広島支局長・宇城昇】


 <メモ>

 NPO法人「雁木組」が運航する水上タクシーは乗船定員6人。平和記念公園発着の10分コース(大人500円、小学生250円)や広島駅近くまで片道約30分の京橋川クルーズ(大人1500円、小学生750円)、1時間チャーター(1万円)などコース多数。予約が必要で、問い合わせは、電話(082・230・5537)かサイト(http://www.gangi.jp)。


次回は青森県です

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 ■人物略歴

中澤晶子(なかざわ・しょうこ)さん

 1953年名古屋市生まれ、中高時代を広島市で過ごし、大学卒業後に戻った。91年「ジグソーステーション」で野間児童文芸新人賞。「あしたは晴れた空の下で ぼくたちのチェルノブイリ」「ワタシゴト 14歳のひろしま」など作品多数。毎日新聞大阪本社版の「読んであげて」のコーナーでは「3+6の夏」(2014年)、「さくらのカルテ」(17年)を連載した。最新刊は「ひろしまの満月」(小峰書店)。

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