レモン、ラベンダー… においを再現する不思議な装置とは

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嗅覚ディスプレーを示す中本高道・東京工業大教授。いくつもの細長い容器に要素臭が入っている=横浜市の東京工業大で2022年5月30日午後5時11分、吉田卓矢撮影
嗅覚ディスプレーを示す中本高道・東京工業大教授。いくつもの細長い容器に要素臭が入っている=横浜市の東京工業大で2022年5月30日午後5時11分、吉田卓矢撮影

 「どんなにおい?」と聞かれて、説明に困ったことはないだろうか。においの再現は難しいとされてきたが、東京工業大の中本高道教授(ヒューマンインターフェース)らのチームが、それを可能にする不思議な装置を開発している。どんな仕組みなのだろう。

合成したにおい「区別できず」

 記者は5月末、横浜市にある中本さんの研究室を訪ねた。

 表面にいくつもの穴があり、中が空洞になった半球状の装置があった。穴には、筒状の部品が何本も刺さっている。多くの配線が延び、パソコンや回路基板につながっている。

 名を「多成分調合型嗅覚ディスプレー」という。記者は促されるまま、装置の前に座って、鼻を近づけた。

 「最初はパルマローザの香りです」。イネ科の多年草から抽出した爽やかな香りの精油だ。修士2年の林寛人さん(24)がパソコンを操作すると、ファンが回り、香りを含んだ風が鼻にすーっと流れ込んだ。

 3回同じ操作をした後、こう聞かれた。「1回だけは装置が作り出した香りで、残りの2回はパルマローザの精油そのものでした。どれだか分かりましたか」

 記者には区別がつかず、再挑戦してもだめだった。レモンも試した。今度は一応、装置がつくったにおいを当てることはできたが「わずかに香りが強いかな」と感じただけで、自信はまったくなかった。

20種類の要素を抽出

 人間の五感のうち嗅覚は、特にデータ化や再現が難しいとされる。視覚や聴覚は、テレビやラジオ、インターネットなどで離れた場所で再現できるが、においはそうはいかない。

 この装置ではどう再現しているのか。…

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