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いま働いている北海道の診療所には高齢の患者さんもたくさん来るので、長い人生の話を聞くのが楽しみだ。「東京大空襲で焼け出されて浅草から来たんですよ」「足腰のリハビリのために始めた化石探しで世紀の発見を次々にした」など、診察も忘れて驚いたり感心したりすることも多い。
「診察室で聞く高齢の患者さんの話は面白い」と気づいたのは、実はコロナワクチンの接種会場でだった。ふだんの精神科診察では若い人やビジネスウーマンを診ることが多かったのだが、高齢者から始まったワクチン接種の手伝いに行って、80代、90代の人たちに大勢お目にかかることになった。短い時間の問診でも「ワクチン接種に来た思い」や「コロナが収まったらしたいこと」を打ち明けてくれる方々がいたのだが、それがどれも深みやユーモアのある話だった。
「30歳には30年分の人生の話があるが、90歳には90年分の人生の話があるのだ」という当たり前のことに改めて気づかされた。
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