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KDDIの大規模障害 混乱深めた甘い危機想定

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 生活に欠かせない通信インフラを機能不全に陥らせた責任は重い。徹底的に原因を究明し、再発を防がなければならない。

 KDDI(au)で大規模な通信障害が発生した。音声をデジタル変換する機器の不具合が他のシステムに連鎖し、最大3915万回線で通話やデータ通信が利用しにくくなった。影響は発生から3日目になっても続いた。異例の事態である。

 暮らしや企業活動への打撃は甚大だ。宅配便の配送状況や気象データの収集が滞り、一部の銀行では現金自動受払機(ATM)が使えなくなった。さまざまなモノやサービスがネットでつながる社会のリスクが浮き彫りとなった。

 豪雨や台風、地震などの災害時に、通信は重要な役割を果たす。自動運転などの次世代技術にも不可欠だ。機能がマヒすれば命に関わるだけに、万全な対策が必要なのは言うまでもない。

 携帯電話の通信障害は、昨年10月にもNTTドコモで起きている。通信設備の工事でトラブルが発生した場合の対応が徹底されておらず、障害は29時間に及んだ。

 総務省は各社に対策の強化を求めていたが、教訓が生かされたとはいえない。KDDIは、一部の機器の不具合が全面的な通信障害につながる事態を十分に考慮していなかった。危機想定の甘さが混乱を深めた側面は否めない。

 障害に備えたバックアップ体制の整備や従業員の教育・訓練は十分だったか、検証が欠かせない。

 顧客対応にも問題があった。当初は障害の発生を知らせる短い文章をウェブサイトに掲載する程度で、翌日に記者会見をするまで、原因や復旧の見通しに関する情報は不足していた。

 大規模な障害だけに、店舗やコールセンターでの対応にも限界がある。情報発信やコミュニケーションの手法に工夫が必要だ。

 総務省は電気通信事業法上の「重大な事故」と捉え、行政指導する方向だ。固定電話や公衆電話が減少する中、通信の品質と安定性を高める政策が求められる。

 機械に故障はつきものである。サイバー攻撃などのリスクも高まっている。トラブルを防止し、発生しても影響を最小限に抑える取り組みを強化すべきだ。

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