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露のサハリン2「接収」 LNG安定調達に万全を

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 ロシアの揺さぶりに動じてはならない。同時に、発電を支える液化天然ガス(LNG)の供給が途絶する最悪の事態も想定した備えが求められる。

 プーチン露大統領が、極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で日本企業が持つ権益の接収につながる大統領令に署名した。

 露国営企業ガスプロムが過半の株式を持ち、三井物産と三菱商事も1割程度出資する。日本の輸入の約9%を占めるロシア産LNGの大半を供給している。

 大統領令によると、サハリン2の全資産をロシアが設立する新会社に移管する。ロシア側が示す条件に1カ月以内に同意すれば、日本勢を含む外国企業に権益の維持を認めるという。

 大統領令は「非友好的活動に対して国益を守る」と明記している。ウクライナに侵攻したロシアに対する米欧主導の経済制裁に同調した日本への「報復措置」と読み取れる。西側諸国を分断する意図は明白である。

 だが、制裁はロシアが国際法を踏みにじったことへの代償だ。国際商取引のルールを一方的に破る行為は断じて容認できない。

 資源小国の日本にとって地理的に近いサハリンはLNGの貴重な調達源だ。紛争リスクのある中東産への依存から脱却する戦略の柱である。それだけに、政府はサハリン2の権益を維持することにこだわってきた。

 ロシアは欧州向け供給を一部停止するなど、資源を武器として使う姿勢を強めている。サハリン2も例外とは言えず、供給が停止されれば、電力需給が逼迫(ひっぱく)する日本は厳しい立場に追い込まれる。政府は代替調達先の確保に万全を期さなければならない。

 ただ、資源価格が高騰する中、調達方法を長期契約から、需給に応じて市場で取引するスポット契約に切り替えれば、1兆円を超す追加負担が生じるとの試算もある。打撃を抑えるには、中東や豪州など産出国との協力や、エネルギーの「脱ロシア化」を進める欧州との協調が欠かせない。

 電気・ガス代上昇で大きな影響を受ける低所得層への支援など国内対策も必須だ。政府は事情を丁寧に説明し、国民の理解を得る努力を尽くす必要がある。

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