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米国を変えるために立ち上がった女性10人を紹介する「私たちが声を上げるとき アメリカを変えた10の問い」(集英社新書)の著者5人とオンライン座談会を開いて<アメリカから学ぶ声の上げ方12カ条>を練り上げる。最終回のテーマは「継続」。座談会の議論は少しつらい話にも及ぶ。現状を変えようと声を上げても必ずしも成功するわけではない。失敗したり、何も変わらなかったりすることもある。そんなとき、上げた声を押しつぶさず、社会に響かせ続けるにはどうすればいいのだろう。【國枝すみれ】
著者5人は、アメリカ研究が専門の、同志社大学の和泉真澄(いずみ・ますみ)教授▽立命館大学の坂下史子(さかした・ふみこ)教授▽東京大学大学院の土屋和代(つちや・かずよ)准教授▽同志社大学大学院の三牧聖子(みまき・せいこ)准教授▽ハワイ大学の吉原真里(よしはら・まり)教授。(以下は敬称略)
挫折の歴史と覚悟
◆三牧 悪戦苦闘の末に、成功もあれば、挫折もある。この本に出てくる10人も、声の上げ方は多種多様です。声を上げるまで長い時間がかかったり、頑張ったのに具体的な結果がでなかったり。例えば、心理学者のクリスティーン・ブラゼイ・フォードは上院司法委員会の公聴会で最高裁判事候補となったブレット・カバノーによる性被害を告発する証言をしましたが、疑惑も晴れないまま、彼は最高裁判事になりました。
◆吉原 負けている人に、目の前の戦いには負けてしまったけど、それは無意味ではないと思わせるだけの周りのサポートがとても大事です。あなたがしていることは私たちにとってものすごく意味があるのだということを、その人に伝えることが大事だと思います。
◆土屋 勝ち負けでいえば、黒人新聞の編集者・発行人のシャーロッタ・バスは負け続けました。市議会議員選も連邦議員選も副大統領候補として臨んだ1952年の大統領選も。彼女にとって負けることは想定内だったと言えるでしょう。でも「問題を提起することで、私たちは勝つ」と考えていた。
声を上げるに至るまでの過程、声を上げた瞬間、そしてその後で、発言の意味合いは変わっていきます。その時は「負けた」かもしれないけど、長い間戦っていくうちに違う世界が開けるかもしれない。別の人にバトンを託して、自分の命が尽きた後に「勝つ」こともあるかもしれない。発言が持つ重みも変わっていきます。
◆坂下 テニスの大坂なおみ選手はブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大事だ、BLM)支持の声を上げる前、「私たちの子どもたちの世代のためにこの世界をより良い場所にするには何ができるだろう?」と自問しています。テニス界の性差別に抗議してきたセリーナ・ウィリアムズ選手は「私には無理でも、次の人には良い結果になるかもしれないからです」と声を上げ続ける決意を語っています。
自分だけの闘いだと思ったら参戦しようとは思わないかもしれないし、負けるぐらいだったらやらなくていい、と思うかもしれない。けれど、これまでに…
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