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第26回参院選

2022年夏の参院選は6月22日公示、7月10日投開票。関連するニュースをまとめています。

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“参政党現象”とは? ノーマスクで人だかり 参院選で議席獲得

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当選確実となり、記者会見で笑顔を見せる参政党の神谷宗幣氏=東京都港区で2022年7月11日午前6時11分、三浦研吾撮影
当選確実となり、記者会見で笑顔を見せる参政党の神谷宗幣氏=東京都港区で2022年7月11日午前6時11分、三浦研吾撮影

 結党からわずか2年の参政党が、10日に投開票された参院選の比例代表で176万票を得て1議席を獲得し、政党要件も満たした。今年春ごろまでは一般にはほとんど知られていない政治団体だったが、参院選が近づくにつれ、ネットを中心に広がりを見せ、街頭演説では選挙前から人だかりができた。なぜ国政に進出できたのか。選挙戦を振り返り、“参政党現象”を考えた。【田中裕之、佐野格】

「発言にタブーはない」

 比例で1議席を得たのは、参政党事務局長の神谷宗幣(そうへい)氏(44)。参院選の全選挙区に45人、比例に自身も含む5人の候補を擁立した同党の中心人物だ。

 「参政党は発言にタブーもないし、何かを気にしながら活動しなければいけないわけでもない。党員や国民の声を聞いて、それをストレートに国政に持っていけるのが強みです」。神谷氏は、当選が確実となった11日朝、東京都内での記者会見で喜びを語った。

 神谷氏は大阪府で吹田市議を務めた後、2012年衆院選に大阪13区で自民党から出馬して落選した。その後、教育改革を志して、教養系のユーチューブチャンネルを開設。旧日本維新の会などに所属した元財務官僚の松田学元衆院議員(現・参政党共同代表)らと20年4月に党を設立した。

強い保守色

 同党の政策は保守色が強い。神谷氏の編著「参政党Q&Aブック 基礎編」(青林堂)では、「日本国憲法は占領下でGHQ(連合国軍総司令部)の監視の中で作られた」などとして「新しい憲法」の制定を主張。「対米自立」や反グローバリズムの姿勢も示す。

 党のホームページには、重点政策として、学力より考える力を重視する教育改革▽化学物質に依存しない食と医療の実現、循環型の環境追求▽外国資本による企業や土地買収の規制など「国のまもり」の強化――を挙げる。教育では「国や地域、伝統を大切に思える自尊史観の教育」も記載する。新型コロナウイルス対策では、政府によるワクチン接種推進への反対やマスク着用の自由化など、批判を受ける主張が目立つ。“参加型民主主義”を目指す一方で、政策の内容には曖昧なものも多く、神谷氏自身も11日の会見で「具体的に取り組む政策は党員と話し合って決めていく」と説明した。

ユーチューブで浸透

 そんな参政党への関心を広げたのは、同党が力を入れるユーチューブへの動画投稿などSNS(ネット交流サービス)だ。神谷氏がメインキャスターを務める教養系のユーチューブチャンネルの登録者数は30万人を超え、党のチャンネルも約20万人の登録者がいる。松田氏のチャンネルも登録者が25万人いる。幹部の街頭演説を短く編集して拡散する有志のユーチューバーも現れ、「昨年末に約1万人だったサポーターは約9万人に増えた」(神谷氏)という。今回の選挙に際しては、クラウドファンディングなどで4億円以上の活動資金を集めた。

ワクチン接種に異論

 記者も参院選終盤の7月7日夕、街頭演説を見に行ってみた。

 「いち、に、さんせいとー!」。さいたま市のJR浦和駅前で行われた神谷氏の演説会では、支持者約1000人が空に向かって指を「1、2、3」と一斉に突き上げた。党のシンボルカラーのオレンジ色のTシャツ姿の人もおり、日の丸の旗を掲げる支持者もいた。

 この日は、新型コロナの新規感染者が全国で4万7961人確認され、東京都の小池百合子知事は「(感染拡大の)『第7波』に入ったとも考えられる」と述べた。だが、聴衆にマスクを着けている人はほとんどいなかった。神谷氏も着けていなかった。

 「反ワクチン、ノーマスク」の姿勢が目立つ参政党。神谷氏は前述の編著で、新型コロナについて「風邪に気をつける程度の警戒心を持っていれば問題ない」などと訴える。

 7日も、神谷氏は「私たちの言っていることのスケールが大き過ぎるから、勉強が足りない人は『陰謀論…

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【第26回参院選】

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