上海覆う「ゼロコロナ」の影 都市封鎖解除から1カ月余の現状

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、PCR検査を受ける市民=上海で2022年7月12日、ロイター
新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、PCR検査を受ける市民=上海で2022年7月12日、ロイター

 中国経済が新型コロナウイルスの打撃から立ち直る日はいつなのか。15日に発表された2022年4~6月期の成長率は、コロナを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策の影響で大失速した。ロックダウン(都市封鎖)の解除から1カ月あまりたった上海市の現状を探った。

「都市封鎖」で大混乱、今は回復

 「日曜も勤務日にしてフル稼働を続けており、主力のエンジン部品は通常時より25%増産できている。従業員には本当に申し訳ないが、今後の夏休みもほぼ返上するつもりだ」。上海市西部の日系自動車部品メーカーの工場責任者(55)は、「挽回生産」の現状を、こう語る。

 自動車や電機、石油化学などの国内外企業が集積し、港湾としてのコンテナ取扱量は世界一を誇る中国経済の中心地、上海。コロナ感染者の急増に伴い、3月末から、住宅地から外部への移動を原則禁止するロックダウンが敷かれると、市民生活や企業活動はまひ状態に陥った。

 同社も突然の事態に対応できず、4月末まで工場は完全にストップした。その後、移動制限の影響を受けないよう、全作業員の約3分の1にあたる100人弱に工場や事務所に寝泊まりしてもらって操業を再開したが、稼働率は通常時の25%程度。「上海や周辺部の取引先の稼働停止が続いたり、部品を運搬するトラックの運行が滞ったりした影響も大きかった」(同)という。正常化はロックダウンが解除された6月1日以降までずれこんだが、その後はおおむね順調という。

自動車は支援手厚く「復活」アピール

 他の企業も同様で、日本貿易振興機構上海事務所によると、現地駐在の日系企業は5月下旬時点の調査では稼働率3割以下の企業が全体の半数を占めたが、「現在は生産・物流面ともほぼ復旧した」(担当者)という。米電気自動車大手テスラの上海での6月の生産台数は、月次ベースでは過去最高を更新した。

 産業の裾野が広い自動車は当局の支援も手厚い。中国政府が自動車購入時にかかる税金を半減させたのに加え、上海では独自に渋滞対策などのため実施していたナンバープレートの支給制約を緩和した。中心部のショッピングモールでは、複数の自動車メーカーが電気自動車の特設売り場を設けて販促キャンペーンを開始するなど、「上海復活」ムードの醸成に努めている。

消費回復は道半ば

 だが、消費の回復はなお道半ばのようだ。…

この記事は有料記事です。

残り1514文字(全文2480文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の筆者
すべて見る

ニュース特集