伊藤詩織さん「当事者としては一つの区切り」 判決確定受け会見

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記者会見するジャーナリストの伊藤詩織さん=東京都港区で2022年7月20日午前11時5分、吉田航太撮影
記者会見するジャーナリストの伊藤詩織さん=東京都港区で2022年7月20日午前11時5分、吉田航太撮影

 元TBS記者の山口敬之氏(56)による性暴力被害を認定した判決の確定を受け、ジャーナリストの伊藤詩織さん(33)が20日、東京都内で弁護団と記者会見を開いた。伊藤さんは「一つの区切り。当事者としての声を発信するのはこれきりにし、報道の仕事に専念したい」と語り、顔と氏名を公にして闘った約5年に及ぶ訴訟に「後悔はない」と時折声を詰まらせながら語った。

 1、2審判決によると、伊藤さんは2015年、就職先の紹介を受けるため山口氏と会食した後、深酔い状態となり、自力でタクシーから降りられず2人でホテルに入った。山口氏は意識を失った伊藤さんと性行為をし、伊藤さんはその後、病院に駆け込み警察や友人に相談した。

 伊藤さんは17年、山口氏に約1100万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。性行為を巡る同意の有無が争点となった。最高裁第1小法廷は今月7日付で山口氏側の上告を棄却する決定を出し、「同意がなかった」として山口氏に約332万円の賠償を命じた2審・東京高裁判決が確定した。

 伊藤さんは会見で「公に自分の性被害を語ることは家族からも反対され、いろいろな溝が周囲とできたこともあった」と振り返り、「一緒に声を上げてくださった方がいたことは、私が生きていく中で大きな支えになる」と感謝した。

 被害から7年。「(訴訟を担当した西広陽子弁護士に)初めて相談したのが25歳で、今は33歳。『これがやりたい』『あれがやりたい』とリストを作って、やりたいことがたくさんあって……その中で出会った人もいて、学んだことが多く、後悔はない」と語った。

 この一件を巡っては、東京地検が16年、準強姦(ごうかん)容疑で書類送検された山口氏を容疑不十分で不起訴処分とし、検察審査会も17年に不起訴相当と議決している。伊藤さんは「日本の刑法では同意のない性交はレイプではないということにすごく問題を感じ、変えてほしいと思った」と被害公表時の心境を説明した。

記者会見するジャーナリストの伊藤詩織さん(左から2人目)=東京都港区で2022年7月20日午前11時8分、吉田航太撮影
記者会見するジャーナリストの伊藤詩織さん(左から2人目)=東京都港区で2022年7月20日午前11時8分、吉田航太撮影

 一方で、賠償額では弁護士費用や医療費もカバーできず、「あまりにも負担が大きかった」と語った。西広弁護士も「訴訟がこれだけ継続すると、被害者は精神的、経済的に負担を強いられる」と指摘した。

 伊藤さんは雑誌や著書で「山口氏から薬(デートレイプドラッグ)を飲まされた」などと主張していたが、東京高裁は「薬を飲ませたと認める的確な証拠はない」とし、反訴した山口氏に対する名誉毀損(きそん)の成立を認め、伊藤さんに55万円の支払いを命じた2審判決も確定した。

 伊藤さんは「話してはいけないこととして自分の被害がとらえられた。今後どう自分の被害を語っていけばいいのか。最高裁の決定も一つの判断だが、これが全て今の社会で進むべき方向を示しているものではないと思う」と指摘し、山口元一弁護士も「これからの司法に課された課題」とした。【宇多川はるか】

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