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この国はどこへ これだけは言いたい 9条生かした外交力発揮を 参院議員を引退・共産党副委員長 市田忠義さん

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自身の病気について話す元共産党書記局長の市田忠義参院議員=東京都渋谷区で2022年7月13日、宮本明登撮影
自身の病気について話す元共産党書記局長の市田忠義参院議員=東京都渋谷区で2022年7月13日、宮本明登撮影

市田忠義さん 79歳

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れた衝撃は消えないが、世界に目を移すと、ロシアによる侵攻でウクライナの人々の日常は踏みにじられ続けている。そんな折、戦前生まれの政治家がまた1人、国会を去る。今回の参院選に立候補せず、引退を決めた共産党の市田忠義副委員長(79)は、戦争のことは決して忘れてはいけないと、語気を強める。

 参院選後の平日の昼下がり。体にまとわりつくような細かな雨の中、JR代々木駅から共産党本部へと向かうと、日に焼けた柔和な笑顔の市田さんが玄関で迎えてくれた。2001年に大腸がん、昨年は脳梗塞(こうそく)の手術を受けたが、すたすたと歩く足取りも、おしゃべりも滑らかで、お元気そうである。

 術後の体調管理のため、好きなお酒は週2日の「休肝日」を設け、1回で飲む量はビール中瓶1本まで。これまた好きなカラオケも控えているという。「カラオケの方は新型コロナウイルスのせいです。3年間歌っていないのでストレスがたまるね」。ストレス解消のため、歌声を響かせるのは、お風呂の中だけだ。では、体調はいかがなのか。「仕事は普通にこなしますが、何となくフワフワと雲の上を歩いているような感じがします。大きな手術の影響で、自律神経が乱れているそうです」

 そんな市田さん、亡くなった安倍元首相との意外な接点をあげる。「安倍さんは潰瘍性大腸炎で2度、首相を辞めました。僕も同じ大腸の病気だということをご存じで、国会の廊下とかでばったり会うと、『その後、体調はいかがですか。お互い大変ですね』など、会話を交わしたもんです」。在りし日の元首相とのやり取りを振り返った。

 参院選では、演説のために全国16都道府県を回ったという市田さん。日焼けしていたのは、そのためである。安倍元首相が奈良県で銃撃された8日は、同じ関西の兵庫県と大阪府で遊説していた。演説の冒頭、心肺停止の段階では「一日も早い回復を願います」と語り、死去が判明した後は「心からお悔やみ申し上げます」と触れたという。

 共産党は「暴力に屈するわけにはいかない」と、事件当日も予定通り選挙運動を続けた。「翌日には、どの党も選挙活動を再開しました。暴力に対して萎縮して『民主主義が死んだ』とはならなかったので、その点では良かったと思います」

 そう語る市田さん、一方で今のメディアの報道姿勢には苦言を呈する。「安倍さんがお亡くなりになり、一定の節度はもちろん大事です。しかし、弔意の表明と政治的評価は別です。『アベ政治』の功罪はしっかりと検証すべきです。今の報道は『功』ばかりじゃないですか」。集団的自衛権の行使容認、モリカケ(森友学園・加計学園)や「桜を見る会」、公文書改ざんといった「安倍1強」の負の側面も論じるべきだというのだ。

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