3億km先で60cm…はやぶさ2が切り開いた宇宙開発の未来/上
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小惑星リュウグウから見事に試料を持ち帰り、日本の宇宙開発の底力を示した探査機「はやぶさ2」のプロジェクトチームが、6月末で解散した。はやぶさ2は次の小惑星へ向かっているが、地上で支えてきたチームは大きな区切りを迎えた。はやぶさ2が切り開いたものは何だったのか、2回に分けて振り返りたい。【永山悦子】
成功基準「本当にできるのかよ」
「ここまでやり遂げられたことに満足しています。今はリュウグウに感謝していますし、チームのメンバー、応援していただいた皆さんにも感謝しています」
6月29日に相模原市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所で開かれた記者会見。はやぶさ2の総責任者である津田雄一プロジェクトマネジャー(47)は語った。
資料では、打ち上げ前に定めた全11項目の成功基準がすべて、達成できたことを意味する緑色に塗られていた。
「達成」の意味は、先代はやぶさと、はやぶさ2で大きく違う。
はやぶさでは、小惑星から試料を持って帰るという構想は、米航空宇宙局(NASA)も手を出さないほど野心的で「完了するのは不可能」とも思われていた。
このため、うまくいった点ごとに評価する「加点方式」を採用した。イオンエンジンが稼働したら50点、小惑星にランデブーできれば200点……と、ミッションの進捗(しんちょく)に応じて点を重ね、小惑星の試料を入手できれば満点の「500点」とした。
一方、はやぶさ2は先代の実績を踏まえ、成功基準として、より詳細で挑戦的な目標を立てた。
理学、工学にまたがる4分野について、③最低限(ミニマム)の合格②完全(フル)に成功①完全成功のさらに上(エキストラ)に挑戦――という3段階(1分野だけは2段階)の基準を設け、全11項目を設定した。①には、リュウグウの地下の物質を露出させて採取するという「『本当にできるのかよ』と思うようなもの」(津田さん)も盛り込んだ。
予測できない事態にも直面した。リュウグウは岩だらけで安全に着陸できる場所がほとんどなかった。高度計で表面までの距離がうまく測れず、着陸が中止されたこともあった。
「どんな天体でもそれを克服できるチームにしたいと思っていました。しかし、リュウグウは我々の想像を裏切る厳しさで、恨みました」(津田さん)。だが、11項目をすべてクリアできたばかりか、3億キロ先の天体に「誤差60センチの精度で着陸する」など、11項目でも掲げていなかった「世界初」も成し遂げることになった。
若きリーダー、実は慎重派
津田さんは記者会見の直前に、私(記者)のインタビューに応じてくれた。
…
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