再生医療の治療計画、作成支援し承認にも関与 ずさん審査の実態
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関節症やがんなどの治療では、一部で再生医療が取り入れられている。患者に医療費の全額負担を求める「自由診療」の場合、国に認定された委員会の審査をパスしなければならない。ところが、いいかげんな審査があると聞き、取材をすると、国の還付金制度の対象なのに、あまりにも不透明な実態が浮かんだ。【信田真由美、渡辺諒】
委員会が審査するも…
再生医療は、加工したヒトの細胞を使って病気やけがで損なわれた臓器や組織を回復させる医療のこと。医療機関が自由診療で再生医療を提供するには、治療計画を立てた上で承認を得ることが、再生医療安全性確保法で求められている。
承認を得るための審査は、治療のリスクに応じて、再生医療に関係するクリニックや大学などが設立した委員会が実施する。委員会の設立に当たっては、厚生労働省が定めた要件を満たし、厚労相から認定される必要がある。
委員会のメンバーは、医療関係者や弁護士といった専門家らで構成する。2021年3月の時点で、認定された委員会の数は計150以上ある。再生医療を提供する医療機関は、審査を受ける委員会を選ぶことが可能だ。
審査では、治療計画の安全性などをチェックする。しかし、一部の委員会では、審査が形骸化しかねない状況になっている。
再生医療で使われる細胞を取り扱う関東地方の医療品メーカーは、医療機関の治療計画作りの支援業務をしていた。一方で、この計画を審査する委員会の事務局も担っていることが、毎日新聞の取材で判明した。メーカーの社長は、委員会のメンバーにもなっていた。
つまり、同じメーカーが審査する側とされる側で関わっていることになり、これでは利益相反になる可能性がある。さらに、治療計画によっては、このメーカーの製品が使われることになっていたという。
「社内監査で問題があると指摘された。社会正義がゆがめられる可能性があることは認識している」
このメーカーの社長は6月、取材にそう証言した。社長によると、自身が顧問を務める医療機関の治療計画を承認したこともあった。
「自分が関わった治療計画を審査した時には、発言を控えていた。とはいえ、こうした仕組み自体がまずい…
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