「なんで使ったおむつ返すの?」保育園に渦巻く親たちの戸惑い
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公立保育園で園児が使ったおむつを保護者に持ち帰らせている自治体が全国の4割に上ることが、民間団体の調査で明らかになった。その理由は五つに集約されるが、いずれも親たちには合点がいかないものばかり。私立でも園によっては同じ問題があるが、地域の育児を支えるのは行政の務め。なのになぜ、多くの自治体は保育園での処理を率先して進めないのか。2人の専門家は「行政の挙げる理由は言い訳に過ぎない」と指摘し、現状を変える手立てを示した。【藤沢美由紀】
保護者、疑問抱くも「波風立てたくない……」
「なぜ持ち帰らなければいけないのでしょうか。疑問を持っているのが私だけなのか、当たり前のことなのかも分からず、波風を立てることに抵抗があって園に疑問を伝えたことはありません。でも、おかしいですよね」
京都市内の保育園に長女(2)を通わせる女性(43)は、戸惑いを隠さない。子どもを迎えに行くと、毎回3、4個ほどの使用済みの紙おむつを袋に入れて持ち帰らされる。臭いもするし、「恐ろしくて」中を開けて見たりはせず、そのままごみ箱に捨てる。便の状態は保育士が連絡帳に書いてくれており、「それを読めば十分」と話した。
「持ち帰らせ」自治体の4割、「西高東低」の傾向
保育園向けに紙おむつの定額制サービスなどを手がける「BABY JOB」(大阪市)は、同社が運営する「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」を通じ、使用済みおむつの持ち帰りについて実態を調査した。
今年2月以降、公立保育園がある全国1461の市区町村にそれぞれ聞き取りし、持ち帰りの園が一つでもあれば「持ち帰りあり」と分類。その結果、「持ち帰りあり」の自治体は39%に上った。一方、「持ち帰りなし」は約半数の49%、「把握していない・その他」が11%だった。
「持ち帰りあり」の自治体の割合が高い都道府県は、滋賀県(89%)▽長野県(85%)▽香川県(75%)▽京都府(73%)▽島根県(67%)▽山口県(同)▽福井県(65%)▽岡山県(60%)▽宮崎県(同)▽徳島県(59%)――など。
一方、割合が低かったのは、沖縄県(5%)▽秋田県(6%)▽富山県(7%)▽新潟県(12%)▽山形県(14%)▽茨城県(16%)▽東京都(17%)――などで、愛媛、石川、青森の3県に至っては「持ち帰りあり」の自治体がなかった。
「持ち帰りあり」の割合が高い10府県はいずれも中部地方より西の地域で、東の方が割合が比較的低い「西高東低」の傾向が見て取れる。ただ、香川と愛媛のように隣県でも対応に顕著な差が表れた地域もあり、一概には言えない。
過去5年以内に持ち帰りをやめて保育園での廃棄に切り替えた自治体は148、今後切り替えを検討する自治体は68に上り、持ち帰り廃止の動きは高まりつつあると言える。だが一方で、検討予定もない自治体は約400あり、同会は「意識が二極化している」としている。
「持ち帰り」何のため? 五つの理由
「持ち帰りあり」の自治体にその理由を尋ねると、回答は五つに分類できたという。最も多かった回答は…
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