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指先のエロス

全盲の落語家・桂福点さんが、魅惑の世界を「指先」案内します。

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指先のエロス

青春の日、柔らかな腕 見えずとも輝く夏の星座=桂福点

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イラスト・まどさん
イラスト・まどさん

 後にも先にもあの時だけだ。彼女とあんなふうになったのは。暑い夏、大の字で寝転がっていると、彼女が私のそばにそっとやってきて、手を重ねて横たわった。まずい。適切な距離を保つ、これがルールのはずだ。柔らかな彼女の手をもう片方の手で包み込んだ。彼女のやや毛深い腕をなでて、指先で茂みをかき分けた。いつもより心がつながりあった気になる。すると私の手に、また手を重ねてきた。

 彼女とはよく出かけた。ある日、出先でカフェに入ったら、奥からおっさんが「うちは食品を扱(あつ)こうてまんねん。それにホットドッグが売りでんねや。嫌がらせに来てまんのか」。どこが悪いねんと、きびすで砂をかけ店を出た。

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