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安倍氏「国葬」を決定 なぜ国会説明しないのか

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 銃撃事件で死亡した安倍晋三元首相の「国葬」を9月27日に行うと、政府が閣議決定した。

 岸田文雄首相が先週、方針を発表して以来、賛否両論が噴出している。だが、なぜ国葬なのか、説明が尽くされていない。

 共産党は「安倍氏の政治姿勢を国家として全面的に公認することになる」と反対し、立憲民主党や日本維新の会は国会で経緯と予算などを説明するよう求めている。

 NHKの世論調査では、国葬実施について「評価する」が49%だった一方、「評価しない」も38%に上った。

 自民党の茂木敏充幹事長は「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」と述べた。異論に耳を傾けようとする姿勢が見えない。

 今回の決定を巡ってはさまざまな疑問がある。

 まず、首相経験者の国葬に法的根拠がないにもかかわらず、国会に諮ることなく政府の独断で決めたことだ。

 1967年に行われた吉田茂元首相の国葬では、手続きが問題視された。当時の政権の判断に委ねる閣議決定だったことから、国会で法整備するのが筋だとの声が上がった。

 75年の佐藤栄作元首相の葬儀では、法的根拠がないことを理由に国葬が見送られた。今回は内閣府設置法に記された「国の儀式」として行うというが、政治家の葬儀に適用されたことはない。

 弔意の示し方は個人の内心の問題だ。押し付けにつながらないかとの懸念もくすぶっている。

 吉田氏の国葬では、政府が官公庁などに黙とうを指示し、民間にもイベントなどの自粛を求めた。

 今回、松野博一官房長官は「国民一般に喪に服することを求めるものではない」と語った。学校や自治体、企業などに対する同調圧力が生まれないよう、配慮しなければならない。

 首相は国葬とすることによって「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」と強調している。

 日本の民主主義の基盤は、国民の代表で構成する国会である。国民の疑問に答えるには、政府が国会で説明し、議論することが欠かせない。

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