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英国のボリス・ジョンソン首相(58)の後任を決める与党・保守党の党首選は、リシ・スナク前財務相(42)とエリザベス(リズ)・トラス外相(47)の2人が決選投票に進むことが決まった。今後は全国16万人超とされる一般党員の投票を経て、9月5日に新党首が発表される。保守党は下院の議席で過半数を占めており、新党首が次期首相になる。英国の新たな「顔」候補は、どんな人物なのか。【ロンドン篠田航一】
「心地よいおとぎ話だ」。スナク氏はツイッターに投稿した動画の中で、他候補が主張する減税策をこう表現し、厳しく批判した。「おとぎ話」という言葉は候補者討論会でも使い、自身は人気取りに走らず、現実路線を貫く姿勢を強調。巧みで安定した弁舌には定評がある。
国民が物価高騰に苦しむ中、党首選の最大の争点は減税の是非だ。スナク氏は財務相時代、新型コロナウイルス禍でも雇用を維持する政策を主導した経済通で、早期の減税を否定し、財政再建を優先させる立場だ。
スナク氏はインド系で、英国生まれ。医師の父と薬剤師の母の間で育ち、英オックスフォード大を経て、米スタンフォード大で経営学修士(MBA)を取得。金融大手ゴールドマン・サックスに勤務後、2015年に下院議員に初当選した。インドIT大手インフォシス社創業者の娘を妻に持ち、スナク氏は英メディアから「最も裕福な英議員の一人」とも呼ばれる。
ジョンソン政権の主要閣僚でありながら、7月5日には首相の政権運営に抗議する形で財務相を辞任し、首相退陣につながる「閣僚辞任ドミノ」の流れを作った。このためジョンソン氏に近い議員からは「裏切り者」とみなされており、ジョンソン派をどう取り込むかが今後の課題だ。
決選投票に勝てば、英史上初のインド系の首相となる。妻との間に2人の子供がいる。
一方、「首相就任初日から減税に取り組む」と宣言したのがトラス氏で、生活に苦しむ家庭を減税によって助けたいと主張する。
トラス氏は数学者の父と反核運動に熱心な教師の母の間に生まれ、左派色の強い労働党支持の家庭で育った。英メディアによると、子供の頃に母にデモに連れていかれて政治に興味を持ったという。オックスフォード大卒業後、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(現シェル)に勤務。10年の下院議員当選後はその実務能力が評価され、司法相など主要閣僚を歴任した。国際貿易相時代には日本との経済連携協定(EPA)締結にも尽力。感情をあまり表に出さないタイプとされる。
スナク氏とは対照的に、ジョンソン氏に最後まで忠誠を誓ったことで知られ、党内保守層の支持が厚い。「鉄の女」と呼ばれたサッチャー元首相を尊敬しているが、一方で「女性政治家が必ずサッチャー氏と比べられることに私はいらだちを覚える。私は私だ」とも述べている。決選投票に勝利すれば、サッチャー、メイ両氏に続く3人目の女性首相となる。会計士の夫との間に2人の子供がいる。
注目されるのが外交・安全保障政策…
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