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安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件の輪郭が少しずつ明らかになってきた。「事件は図らずも日本社会の持つ矛盾をあらわにした」。事件をそう読み解くのは、凶悪事件の加害者・被害者家族の苦悩を描いた小説も手がけ、常々政治に厳しい目を向けてきた小説家の平野啓一郎さん(47)である。
「いつか起きるのでは」懸念現実に
実は平野さん、近未来を描いた最新作「本心」で「暗殺ゲーム」にはまった主人公の同僚が前財務相をドローンで暗殺しようとする場面を描いた。「いつか政治家を狙ったテロが起きるのではと懸念していました」。平野さんがそう話し始めた。当初、襲撃対象は首相の設定だったが、小説が現実に及ぼす影響を考え、変更したという。
「2008年に起きた秋葉原無差別殺傷事件と相前後して、自分の苦境と社会への不満を『無差別殺人』という形で表現する事件が何度も起きてきました。16年の津久井やまゆり園事件、21年の小田急車内刺傷事件もそう。それは『無差別』のようであっても、実際は社会的な弱者や無防備な市民を選び、メディア効果を狙ったものでした。つまり『無差別』というより『恣意(しい)的』に対象を選んでおり、それがいつかは政治家に向かうのではと危惧していました」
実際、今年3月には辻元清美元衆院議員の大阪府内にある事務所の窓が壊されて侵入される事件が起き、平野さんは不穏な空気を感じていた。政治家が身の危険を感じるようになれば言論の自由は危うい、とも言った。
ただし、銃撃事件は脅迫的な「政治的なテロ」とは違うものだと平野さんは見ている。殺人容疑で送検された容疑者を巡っては、幼い時に父親が自殺し、母親は宗教団体「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)に入信していたと報じられている。母親が総額1億円を団体に献金して家庭が破綻していたこと、大学に進学できなかったこと、大病を患っていた兄が自殺したことなども浮かんでいる。
「人命が奪われたことは、決して許されることではない。しかし、事件は…
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