なぜいま?国交省のローカル線見直し提言 沿線自治体の本音と期待

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
JR西日本の赤字ローカル線の一つで、島根県松江市と広島県庄原市を結ぶ木次線=2021年6月15日午後0時49分、松原隼斗撮影
JR西日本の赤字ローカル線の一つで、島根県松江市と広島県庄原市を結ぶ木次線=2021年6月15日午後0時49分、松原隼斗撮影

 国土交通省の有識者会議が、地方鉄道の見直し基準をまとめた。JRでは1日1キロ当たりの平均旅客輸送人員数を示す「輸送密度」が「1000人未満」などが目安だ。地方のローカル線では利用者が激減し、存続が危ぶまれている路線は多い。このタイミングで見直しを提言した背景とその影響とは。

都市部のドル箱路線が地方をカバー

 「これ以上、問題の先送りは許されない」。有識者会議は提言で、地方鉄道の現状について強い危機感を示した。その背景には、各地の鉄道の経営状況が急速に悪化していることがある。

 中小の私鉄など70社の輸送人員は1991年の約5億2000万人をピークに減少し、2019年度は約4億600万人となった。道路網の整備でマイカーなどへのシフトが進んだことや、人口減少などが主因だ。

 このような社会の構造変化はここ数十年で徐々に進んできたが、それに拍車をかけたのが新型コロナウイルス禍だ。外出自粛などの影響で足元の輸送人員はさらに減少したとみられ、鉄道会社の経営環境も急激に悪化。20年度は、第三セクターや地方の中小私鉄など地域鉄道会社95社のうち93社が経常赤字となった。

 経営悪化に見舞われているのは、地方の鉄道会社にとどまらない。JR東日本、西日本、東海という大手も22年3月期まで2期連続で最終赤字となった。

 JRのなかでもこの3社は、都市部のドル箱路線を抱えており、その収益で地方のローカル線の赤字を穴埋めしてきた。しかし、コロナ禍でテレワークが定着したことなどで都市部でも通勤客らが減少。都市部の稼ぎで地方を支えることが難しくなりつつある。

 JRのローカル線を巡っては、80年代…

この記事は有料記事です。

残り1903文字(全文2594文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

ニュース特集