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権力による体制批判の暴力的な封殺に他ならない。ミャンマーで国軍の支配に反対した民主活動家4人の死刑が執行された。
昨年2月のクーデター以降、国軍は市民の弾圧を続けてきたが、今回、「政治犯の処刑」という形で一線を越えた。暴挙を強く非難する。
命を奪われたのは、アウンサンスーチー氏の側近で元ヒップホップ歌手のピョーゼヤートー元下院議員、著名な民主化運動指導者であるチョーミンユ氏らである。
国軍は、4人がテロ行為に関与したと主張し、正当な手続きに従って死刑を執行したと説明しているが、到底受け入れられない。
死刑判決を出した軍事法廷はクーデター後に設置されたもので、国際人権法に反する運用が指摘されている。国連人権理事会の特別報告者は4人を「人権と民主主義の擁護者」と位置付けた。
ミャンマーは軍政だった時期を含めて過去30年以上にわたり死刑執行がなく、国際的には「事実上の死刑廃止国」に分類されていた。にもかかわらず執行したのは、国際社会に背を向け、孤立を深める行為である。
加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧米諸国などによる自制の働きかけをあからさまに無視したことも深刻だ。
ASEAN議長国カンボジアのフン・セン首相は先月、思いとどまるよう求める書簡を国軍トップのミンアウンフライン最高司令官に出していた。
要請を聞き入れられなかったASEANは議長声明で非難した。日米韓など8カ国と欧州連合(EU)の外相も「人権と法の支配を軽視した暴力行為」と糾弾する共同声明を発表した。
日本は、国軍との独自のパイプを強調してきた。従来より厳しい態度で臨む必要がある。
問われるのは、国軍との緊密な関係を維持し、要人の往来を続けてきた中国とロシアの対応だ。不当な死刑執行への批判を控え、黙認するような態度を取るべきではない。
軍事法廷で死刑を宣告された人は100人を超える。国際社会は結束し、これ以上の執行を食い止めるために圧力を強めなければならない。